なおちゃん、稽古場見学、いつ来るの?
きょうは日曜日で、午後から稽古でした。新しく4場の途中までの台本ができてきていました。稽古の前に赤堀さんに、
「自分のホームページに稽古日記とか載せているんですが、今回のも載せてもかまいませんか」
と聞いてみたら、どうぞどうぞという返事でした。
稽古は、まず4場を2回読んで、台本を持ったまま立ち稽古に入りました。加害者が号泣したり祈祷師が登場したりする3場の展開もすごいと思ったけど、4場は、3場の終わりから4場の冒頭の間に何が起こったかという、台本に描かれていない部分がすごくて、もう息もつけない感じです。この後どうなるんだろう。あと10ページくらいということですが。
きょうもらった4場がどうなっているかというと、2場に出てきていた「善意の」ボランティア青年(みのすけさん)が包丁持って乗り込んできてるんですが、何をしたいのかいまひとつわからないんです。夫は3場から引き続きカラスの話ばっかりしているし。結局ボランティア青年が夫にエアガンで制圧されてしまう、というところまで話が進んでいます。
「あまり説明はしたくないんですが」
と言って赤堀さんは、カラスの話(フクロウに黒く染められてカラスはおこったけど、フクロウは黒はむずかしいけど着こなせばいちばんおしゃれな色だと思ってやったんで、フクロウにとってはこれは失敗ではなかった)は、潜在意識的には、半身不随になったことを受け入れられない智子に対して、受け入れよう、車椅子に乗る決心をしよう、という、愛の言葉なんだ、この話は、登(夫)の智子に対するラブストーリーなんだ、という話をしました。俳優がそれを考えて役作りをするとかそういうことではないとも言ってましたけど。
「こんな(に)ラブストーリー(なものは)、いままで書いたことないよ」
だそうです。ラブストーリーの、当事者なんだね、私。あんまりこういう役はやったことがないです。
その後、1場、2場を、2回ずつ、割と止めないでやりました。登・智子と智子の弟夫婦と、二組の夫婦が出てくるのですが、赤堀さんは、二組とも夫婦に見えてきた、と言っていました。それから1場、2場を続けてやって、休憩。休憩のあとはまた1、2場をやるという予定だったのですが、変更してやっぱり3場をやることになり、3場。2回ほどやりました。
「スッキリした?」
は悪意がまだ弱い、ほとんどのお客さんは「いい人なんだ」と思ってしまう、と言われ、
「もっと笑う方向に行くか、もっと強く言う方向に行くか、迷っているんですが」
と言ったら、笑う方向で、とのことで、次にやったときにはいいバランスでできたようです。まだ揺らぎますが。まだあんまり決めないほうがいいと思うということも言われました。
赤堀さんの演出は、いまの段階ではこれこれがいいと思う、という演出で、最初から劇場での完成形を想定してそれに向けて作っていくというのとはちがうようです。この稽古場のこの距離感、いまの相手のこの反応、というのを大切にしてほしいという意味のことをよくみんな言われています。去年の私だったら納得してなかったかもしれません(特に、この方向を向いたときだれだれが目に入るとかそういうことが決まらないと自分の演技を組み立てていくことができないと思っていました)が、いまは、稽古場で「いま、ここ」を大事にしていけば劇場でも「いま、ここ」を大事にしてやれる、そのための稽古なんだ、そういう作り方なんだ、と納得がいきます。
納得はいくけど100%そのやり方ではできない私です。たとえば、「すいません」とあやまって泣く日比さんに、
「どうしたの?」
と声を掛けるところ。いまはあーこりゃもう一瞬も耐えられないよ私は、と思ったときに声を掛けているので、主観的には一定のタイミングなんだけど物理的には安定していないにちがいないことが気になってしまう。
「なんか、もっと早くとか遅くとか、ここで声掛けてほしいとかありますか?」
と日比さんに聞いたら、そういうのはないとのことでした。
「いま、声掛けたくなったところで声掛けてるんですが」
と言うと、日比さんも赤堀さんも、それでいいと思うと言いました。
そして、稽古が終わって、気づくと私は、また、3場の冒頭で「ゴミ箱に放」り投げた画用紙をそのままほっぽらかして帰ってきてしまっていました。あと、稽古用のマイ箸も忘れてきちゃった。
帰り道、きょうは一人でご飯を食べたくなかったので、行きましょうよと誘って数人で居酒屋に行きました。声の大きさの話、物(小道具)の話、台本のカギカッコと台詞の間のスペースの話などを赤堀さんに聞きました。
物というのは、きのう書いたみたいな、私は割と初期段階から実物を使って稽古するのに慣れているので実物がないと不安だ、ということを言ったら、赤堀さんの言うには、シャンプーの場合は逆に、稽古場で作ったものに後半で実物が加わることによってさらによくなる、「物に助けられる」という発想なんだそうです。それも一理あるかも。戯曲のリアリティーの度合いとかにもよるでしょうが。私は今回は、いままで自分が慣れ親しんでいるやり方とシャンプーのやり方の折衷でいきます。と、なおちゃん相手に宣言してる私……。
今朝は早く起きたので、もう眠いや。もう寝ます。では。
きょうは久しぶりになおちゃんや悪口メイツのみんなに会えて楽しかったです。ぎゅーっと濃く稽古をしてるので、それ以外の人たちに会う時間がすごく新鮮で嬉しいです。
きょうは、舞台装置のプランがあがってきたので、そのとおりにバミッて稽古しました。部屋の四辺で言うと、いままで私と同じ辺にいた人が隣の辺になったり、正面だった人が隣接する辺になったりしたので、舞台にいて目にうつる「景色」がだいぶ変わりました。1場、2場を、動線確認も含めて稽古しました。1回やったあと、
「では今度は本テンションで」
と言われて、あれ、いまのはそうじゃなかったんだ?「まきでいきましょう」とさっき赤堀さんが言ってたけど……と少し混乱しました。で、2回め。なかなかテンポよくできたかなと思ったら、全体にみんな急いでいる感じがする、これもありだけれど、と言われました。また、私については、
「きのうに比べて『かわいい』度があがりましたね」
と言われました。ダメってことです。うーん、あまり自覚なかった。特にここ、と指摘されたところは、弟に話しているところでした。稽古の始め頃は加害者と自分の関係ばかり気にしていたけれど、だんだん夫との関係、そして一昨日くらいからやっと弟との関係にも注意が向き始めて、それが過剰に出たんだと思います。そういえば、稽古の後なおちゃんたちに会ったときに、
「かわいいといえば、その髪型もかわいすぎるんじゃないか」
と指摘されたのはおもしろかったです。
1場2場のあと、3場をやりました。きょうは皿、箸、ケーキ代わりの蒸しパン、などが用意されていて、ケーキを配る間とかだいぶ実際に近い状態で稽古できました。やっぱり、実際に物を使って稽古をしてみると、安心します。祈祷師に関して、弟は懐疑的だけど智子(私)はホントウにこれで治ると信じていて、有名な祈祷師が来るとか夫が勝手に呼んだんだとか言うときは、
「自慢するというか、得意げというか。『誉れと恥』です」
と言われました。そうするとその後全部いままでのプランとちがってくるなー。信じてなかったもん、祈祷師のことぜんぜん。赤堀さんは、
「これを表現しろと言うのはむずかしいと思うんですが」
って言ってこの話を始めたので、これはたぶんものすごく微妙なことを言っているので、その微妙なバランスのちょうどいいところを、これから探っていきたいです。
小道具のスケッチブックの代用品として、家にあった子供用みたいなお絵描き帳(おもてに「らくがきちょう」と書いてある)を持ってって使っているんですが、祈祷師がそれを持って説明するときの感じもいいし、智子が絵に真剣にとりくんでいるわけではないという感じもいいから、それを採用したいと赤堀さんが言いました。ただ、いま使ってるのはB5なのでもう少し大きいのがほしい、さがしてみますということでした。
「スッキリした?」
は、きょうもうまくいきませんでした。笑い顔がひきつっちゃうんです。赤堀さんからは、言った後も笑顔にしているほうがいいと言われました。
なおちゃん、
稽古場に行くと、最終ページまでの台本を渡されました。4場の途中からです。あと10ページということだったけど、20ページありました。
8月25日にも書いたけど、こないだもらったのは、包丁を持ったボランティア男を夫がエアガンで制圧したところまででしたが、その後、男たちは牛乳を飲み、女たちは茫然とし、戻ってきた祈祷師はやっぱりインチキで、弟夫婦はこんな状況の中またパチンコに出掛けていき、私たち夫婦と加害者青年は野菜炒めを食べる。こう書くと「え?」って感じですが、なんだかしみじみと心にしみるラストで、赤堀さんは、わかりやすすぎないか、わざとらしくないかと心配していました。
まず、4場のアタマから読み合わせをしました。途中、読み方が作者の意図とちがうところは赤堀さんが、ここはこう、と止めて説明していっていましたが、止められなかったけどよくわからない台詞があったので、1回読み合わせが終わったところで、ここはどういうつもりで言っているんですかと聞いたら、そこはいろいろやってみてほしいんですと、ちょっと困ったような顔の返事でした。あぁ、ここは俳優がやるべきとこだったんだ、失敗した……と思いました。それに、もう1回読んだら意味はわかったんです。あぁ、早くに聞きすぎた! もうちょっと待てばよかった! 後悔先に立たず! って別に稽古場でいっくら失敗したっていいんですけどね。
とにかく、2回、4場を読んで、その後、立ってやりました、4場冒頭から。赤堀さんが、
「まいていきましょう」
と言ったので、ちょっと意味がわからないんですが、間をつめるということですか?と聞いたら、間はつめる、台詞自体も早口とのこと。どうも動線等の確認が主目的のようです。次には、以前から台本があった分は「まいて」、きょう台本ができた分は通常どおりに、という形でもう1度読みました。4場は私は台詞が少ないので、きょうもらった分ももう半分くらいは台詞を覚えてしまいました。
4場のだいたいの動線が決まりました。客席からどう見えるか、この瞬間に観客にだれを見ていてほしいか、というようなことも考慮して、赤堀さんが決めていったのです。青年団での平田オリザの演出の場合は、たぶん俳優一人ひとりよりも全体の構図で語る部分が多いからだと思うんですけど、重なって見えなくなるからダメとかそれじゃ顔が見えないとか、そういうふうなことを言われたことがないので、興味深かったです。ともあれ、自分にそのとき何が見えているか、ということから演技を組み立てていく部分も大きいので、こうして割と早めに動線が決まると、私はやりやすいです。
(青年団の本公演だと、登場人物が多い、というのもあると思います。石庭の石みたいに、どこから見ても全部は見えない、のがあたりまえ、という感じ)
今回の稽古、きょうで8回めです。帰りなんかに話していて、そろそろ「タメ口」が出てきました。新しく人と知り合って、初めは当たり前みたいに敬語で話していて、だんだんときどきぺろっと親しげな口調になって、でもすぐまた丁寧な言い方になって、ってお互い半分は無意識に相手の出方を探りながら「間合いをつめていく」みたいな、こういう過程、私は好きです。
帰り道、衣裳のことを考えていて、あぁあのブラウスがいいかもしれない、と思ったのを家に帰って出してみたら、アタマで考えているときには忘れていたのですが、そのブラウスはポピーの柄で、今回のチラシと同じでした。わざとらしくなっちゃうかな? 明日持っていって見てもらおうと思います。
きょうは、どうも。あの店に入れなかったのは残念だけど、話ができてよかったです。
きょうの稽古は、まぁなおちゃんが見学したとおりなわけですが、記録のため書いておくとしましょう。
まず衣裳。何点か持っていって見てもらい、一応これでもOKというのが1つ決まりました。ポピーのブラウスはダメだった。赤堀さんは、
「いつも一週間前とかだから…」
と、この時期に衣裳の相談をされてちょっととまどっていたみたいです。前には「カジュアルな感じ」と言っていたんだけど、きょうの話では、もっと「お出掛け」っぽい衣裳にしたいということでした。カーテンが緑で絨毯がピンクなんで、薄い黄色みたいなのがやっぱりいいでしょうかねぇ? でもカーテンが緑で絨毯がピンクって、もうそこから変だよね、この家。そこから、もう「壊れて」る……。
まず1場2場を「軽くやりましょう」と言われ、前に「まいて」というのがわからなかったこともあって、どういう意味ですか、これも早くやるんですか、と聞いたら、いや、ちゃんとやります、ちゃんととかいうと緊張しちゃう人もいるから、という答えでした。きのうやってないから「思い出しながらやってみましょう」みたいな意味合いもあるようです。どこの現場でも、そこ独特の言い回しってあるように思います。そこの人はたぶん意識してないけど、外から参加すると、確認しないとわかりません。いちいち聞いちゃって赤堀さんには気の毒なような気もするのですが、指示がわかってないとちゃんとやれないから、しょうがないです、聞いちゃいます。批判しているように思われないといいのですが。
2場ラストの、エアガンを手に部屋に入ってくる夫が、
「大丈夫だよ。こんなんじゃ猫も死なないから…」
と言うのに対し、
「やめなよ…」
と言うところ、
「ちょっと間をあけてほしいんですけど、でもこういう状況だったらやっぱりすぐ言葉が出ますよねぇ」
と赤堀さんに言われて、ビックリしました。ここはだって、「間をあけずに言ってください」とこないだ言われてそのとおりにやってたところだからです。主観的な発話の根拠って、最初はあったのかもしれないけど、スコンと抜けてました(一概にそれではダメだとは思わないんですけどね。だって、日常生活で一生に一度しか起こらないことを舞台では毎回確実にやるんだから、それはやっぱり日常と同じ方法ではできない、何か別の回路が必要だって思っているのね)。でもたしかにここ、間をあけないで言うことだけに夢中になってて、変だったかもしれません。いくら「見え方は演出家にまかせる」といっても、段取りがあんまりただの段取りになってしまわないように、自分でも気をつけようと思いました。
その後4場。祈祷師中心に。以前の稽古のときに、赤堀さんは、登(夫)が妻の脚の回復をあきらめるのはこのポイントだというような説明をしていました。そういうあきらめポイントは妻である私にもあるはずで、きょうの立ち稽古でだいぶそれが明確にわかってきました。
なおちゃん、
ボランティア青年中山役のみのすけさんが、きょうから稽古に加わりました。いままでは代役で稽古をしていたのですが、私は中山としゃべるところが割にあるので、本人と稽古できるようになって嬉しいです。
まず通して読み合わせをし、その後中山の登場している2場、4場を再度読み、その後代役での立ち稽古。みのすけさんに見てもらうためなわけですが、こういうときでも普段と同じに(本人は緊張しているんだろうけれど)代役をやってのける黒田くんはやっぱりすごいなぁと思いました。その後、みのすけさんが加わって立ち稽古をしました。
4場の最後近くで、去りかける中山が登に声をかけられて振り向くんですけど、舞台手前から上手奥に向かって45度の角度で進んでいるみのすけさんに、舞台奥中央にいる児玉さんが声をかけるとき、進んでいるみのすけさんからすると児玉さんはちょうど「ま左」にいて、だから反時計回りに90度回転したら児玉さんのほうを向けるわけなんですけど、みのすけさんが迷わずすごい自然に時計回りに270度回転して(つまり、客席方向に顔を向けて回って)児玉さんと向き合ったので、私はとってもビックリしました。普通あんまりそういう振り向き方をする人はいないんじゃないだろうかと私には思えたのですが、赤堀さんも何も言わなかったので、またビックリしました。基本的に、正面に顔を見せたほうがいい、んですかね、やっぱり。青年団だと、後ろ向きになったりするの当たり前なんだけど。
2場で私は青年二人の絵を描いているのですが、「ポーズを変えさせたいんだけどモデル側が自分からは動けないでいるので、肩を組ませる」、「モデルに『笑って』と指示するが笑えないのでさらに要求する」というところが、相手とのかねあいでうまくいかず(いままでだいたいずっとうまくいっていませんでした)、この状況ではこの台詞は言えないってなっちゃってタイミングがおかしくなったり台詞どおりでないことを言ってしまったりしました。
で、稽古の後何人かで飲みに行ったんですけど(きのうも行ったのにね)、そのときに
「どのタイミングでだれに話したらいいかわからないので迷っているんですが、」
と言ってこの話を赤堀さんにしちゃいました。これこれのところが、と言ったら、あぁ、と赤堀さんはやっぱり私が困っているのをわかっていました。相手役(日比さん)に直接言ってもらっていいと思う、ただ彼はいまいろいろ試行錯誤している最中だし、台本通りにこうしろといえばできるはずだが、そうじゃないのがおもしろくて今とめないで見ているというところもある、という話だったので、
「まだ時間あるし、じゃぁ、もう少し(話し合いでの解決を急がず、演技で)いろいろやってみます」
ということにしました。飲みの席でこういう話をするのはちょっとずるいというか、ホントはホントに赤堀さんと二人だけのプライベートな話にしておきたかったのですが、赤堀さんにはメールで連絡がつかないし、こっちもまだ少し人見知りしてるので、言えるときに言っちゃおうって思って言っちゃいました。
赤堀さんとは初めてなので、いろいろと話して解決していかなければならないことがあります。そういう過程は、手間がかかるけれど大切だし、何度も言うけど私は好きです。こうやって、信頼とか関係を築いていくんだよね。
なおちゃん、
取材の方が稽古場に来ました。THE SHAMPOO HAT主宰の児玉さんが、私を紹介してくれました。
「今回、僕と松田さんは、夫婦の役なんですよ」
と児玉さんが言うと、その人は、えぇ、聞いてますと言って、笑いました。私が、
「え、そこ、笑うとこじゃないですよ」
と言ったら、おもしろい人ですね、と言われましたが、やっぱ意外な感じなのかな、私たちが夫婦役って。ていうかいままでの青年団での私のイメージとか、いままでのシャンプーでの児玉さんのイメージとか、っていうことだと思うので、意外だと思ったけど見てみたらいいじゃん、って思ってもらえるようにしたいです。
稽古は、3場から。「カラス、大ッ嫌いなの」とか「もう治るから」とかの「重要な台詞」を「丁寧に言いすぎる」と言われました。カラスの台詞は以前赤堀さんから
「もっと、立ててください。大っきらいの小さいツを強調するくらい」
って言われてたところなんだけどな。なおちゃんもそうですが、演出家というものは、現在のことしか見ませんね。自分が前に言ったことにすら、縛られない。逆に、だから、信頼できるんですけどね。そういえば、きのうも、以前に「立てて」と言われた、
「で、ここに来たんだ?」
という台詞、結局立てない方向に直されたんでした。台詞を立てて言うっていうのが、苦手なのかしら、私が。
きょうの話に戻りますが、言い方を直したら、
「すごくよくなりました」
って言われました。誉められたっていうか、ちゃんと直ってましたよ、という確認の言葉だと思うんだけど、でも誉められると嬉しいです。平田オリザは、基本的に誉めない(ダメなときは、指示が出る。いいときは、何も言わない)演出家なので、誉められ慣れていないんです。そうだそうだ、
「スッキリした?」
も、笑わないで立てないで言ったほうが悪意が出ると思うと言われ、そういう言い方に変更になりました。
赤堀さんが、進む方向を指示したり俳優の試行錯誤に整理をつけたりして、おーまた一歩前に進んだ、という感じのシーンがいくつもありました。どのタイミングでだれに何を言うか(指示するか)ということを、やはりそうとう計画的に考えている演出家のように思います。同じメンバーで長く活動しているから、相手のことをよくわかっているんでしょうね。
その後、4場の祈祷師のシーンをやりました。周囲の人が祈祷師にどういう期待を込め、どれだけ信じているかという「空気感」がポイントだと、赤堀さん。「いまさらですが」と言っていました。私は、8月26日に赤堀さんから、
「智子は、この祈祷師によって自分が治ると信じている」
と説明されていたので、それ以来、少なくとも懐疑的な態度はとらないようにしています。心の中ではホントに信じているのかもしれないけど、100%信じているように見えたらそれも変だと思うので、「信じ切ってる」と「ぜんぜん信じてない」のあいだの着地地点を、模索中です。
きょうは、稽古が休みです。アゴラに、ポかリン記憶舎の『畳屋の女たち』を観に行きました。青年団から何人か出演しているんですが、みんなよかったです。特に安部聡子さんが、いままでどちらかというといかにも安部聡子っぽい感じの役が多かったと思うんだけどきょうは私の知らない新しい安部聡子で、ものすごく感心しました。新しいことに挑戦してるのは、私だけじゃないのね。すーごい闘志がかきたてられました。いや、安部ちゃんと戦うわけではないんですけど。私もがんばるぞって。
終演後に会って話していたときに、そういう私の気持ちが口調にあらわれていたようで、安部ちゃんに、
「次、何か、やる気でしょ」
と言われました。
『畳屋の女たち』は、そういうわけでとても刺激的だったんですが、それ以外に、
- アクティングエリアが8畳間
- スケッチする人がいる
- 物を食べている
- 物の焼ける、じゅーっという音がある
など、『雨が来る』と共通する点に、やはり注意が向きました。さて、自分はどうしよう、って。
そうそう、帰りに、夕飯の買い物に寄ったスーパーで、B4の「おえかきちょう」発見。稽古用に購入しました。