2004年の春、青年団の若手公演で、『東京ノート』をやることになった。『東京ノート』は私が10年出演し続けている、私にとって大切な作品なので、若手公演にも出演していままでとちがう役で『東京ノート』に参加してみようと思った。本公演では田舎から出てくるお姉さん(由美)の役だが、若手公演では、学芸員(串本)だ。17世紀のオランダ絵画について、由美に長々とレクチャーする役である。いままで10年間聞き続けていたレクチャーを、今度は自分が他の人に向かってしゃべるというのは、なかなか感慨深いものがあった。
その若手公演の舞台は、いままでの本公演と同じく「美術館のロビー」は「美術館のロビー」だけど、作品の展示されているロビーにするということだった。その舞台美術のプランを聞き、私は、
「テキスタイルアートも飾ったらどうでしょうか?」
と美術家に提案し、このタペストリーを作成した。名前の由来は、三角がgeese(ガン)で四角がgoats(ヤギ)。直角二等辺三角形がずらずらつながった、Flying Geese(雁行)という名前のパッチワークのパターンがあるので、それにちなんで。ヤギのほうは、その頃ちょうど、『山羊――シルビアってだれ?』という作品にも関わっていた(エドワード・オールビー作品。脚本を翻訳した)ので、その記念。
左のオブジェは、杉山至の作品「Under the Sky」、通称「ぐるぐるさん」。
(2004年9月)