〜2007年8月の公演から〜
あなざ事情団の観客参加型演劇『ゴド侍』は、こんな公演でした、という雰囲気を少しでもお伝えしたく、舞台写真と説明でストーリー(あるのか?ストーリー)を追ってみました。お楽しみいただければ嬉しいです。
写真は、高橋里恵子さん撮影の舞台写真を、私がトリミング等加工しました。舞台写真掲載に関しては、撮影時にお客様に口頭でご説明しご了承いただいておりますが、もし何か問題がありましたら、お手数ですが、hiroko@dokudami-net.comまでご連絡ください。よろしくお願いいたします。
2007年12月24日 松田弘子
勅使河原会長(お客様)の開会宣言で、サミュエル・ベケット愛好者学会の8月定例会が始まる。 | |
ジュンコ「サミュエル・ベケット愛好者学会、学会員のみなさん、こんにちは! 前回のあなざ事情団公演でチェーホフ研究を完成させた私たちは、『三人姉妹』の公演終了後すぐにサミュエル・ベケット愛好者学会を立ち上げました」 | |
マチコ「ベケット生誕101周年という、われわれベケット愛好者にとって記念すべき区切りの年である今年、ベケット生誕の地アイルランドの首都ダブリンにある、トリニティ・カレッジに行ってまいりました。これがそのときの写真です」 「写真」は、トリニティ・カレッジの前に立つマチコ。上空にはギネスを手にした妖精が飛んでいる。 | |
コタツの天板がホワイトボードに早変わり。グレートブリテン(△)とアイルランド(○)の地理と歴史、そしてサミュエル・ベケットの生い立ちを説明するマチコ。 「今回の調査で新事実がわかりました。フランス語で戯曲とか小説とか書いてますが、実はサミュエル・ベケットはフランス人じゃなかったんです」 | |
ジュンコ「どうして私はサミュエル・ベケットのことがこんなに好きなのかということを発表したいと思います。……あれは私がまだ東京に出てきて間もない頃。大好きなタカハシくんを待って、ベンチ(お客様です)に座っていました」 | |
ジュンコ「私の好きなものは、お祖父ちゃん、亀、そしてひじのところにできるシワ。実はこれらすべて、サミュエル・ベケットに似てるんです」 マチコ「おぉ! ジュンコさんの好きなものって、サミュエル・ベケットに集約されているわけだ!」 | |
あれあれ、サミュエル・ベケット愛好者学会はどこ行った? コタツでくつろぐマチコとジュンコ。「コタツにはやっぱりミカンだよね」 テレビ談義に花が咲く。 そしていつしか二人は、ベケットと妻シュザンヌに。 | |
シュザンヌはパリジェンヌなので、日本の地理にうとい。お客様3人に日本列島(右から、北海道、本州、九州)になってもらい、「岐阜県」の位置を説明するベケット。 | |
働きもせずのらくらしているベケットに業を煮やしたシュザンヌ。「さぁ、マージャン一発勝負。私が勝ったら、結婚してちょうだい。あなたが勝ったら、私、この家を出て行きます!」 勢いあまってマージャンパイを劇場じゅうにぶちまけ、お客様総出でひろってもらう。 | |
お向かいのゴドーさん(お客様)をまじえ、マージャン一発勝負が始まると思いきや、「マージャンは4人じゃないとできないよ」。パリジェンヌのシュザンヌ、マージャンのことを何も知らなくて、計画倒れに。 | |
そこに、レジスタンスの同志から秘密の手紙が届く。「ゲシュタポガヤッテクル。チュウイセヨ」 あぁ、このパリもとうとうゲシュタポの手に落ちるのか!? | |
ゲシュタポ突入。ベケットだけでなく全員がつかまってしまう。 | |
「隣のヤツの肩に手を乗せろ。その上にキャラメルを置け。そのまま全員で立ち上がるぞ。息をあわせろ! キャラメルを落とすな! どうだまいったか、これがゲシュタポ式の拷問だ」 | |
ゴドー大佐「私の名は、ハインハルト・ハイドリッヒ・ゴドー。ナチスドイツ空軍ルフトヴァッフェの仕官だ」 ベケット「僕がレジスタンスのスパイだと知って、なぜ殺さないんだ」 ゴドー大佐「罪を憎んで人を憎まず! これが私の座右の銘だ!」 | |
とかっこよく決めたところで、なぜか二人が入れ替わり、ゴドーの兄貴(帽子をかぶっているほう)と子分のサミュエルの居酒屋トークが始まる。ゴドーの兄貴、ナンパしまくり。「うわー、お譲さん、か〜わい〜ね〜。オレいま心臓止まるかと思っちゃった」 | |
「あれは私がまだ仕官して間もない頃、日露戦争勃発前夜。日本で見つけた変な食べ物があんパンとメロンパンだ。お嬢さん、メロンパンには何が入っているかな?」 | |
「あんパンにはあんが入っているのに、どうしてメロンパンにはメロンが入ってないんだ! 答えろベケット!」 | |
とそのとき、ベケットに電話がかかってくる。「え、ノーベル文学賞受賞? 僕が?」 | |
ノーベル章受賞を喜びあうベケットと愛人バーバラ。 | |
ベケットはストックホルムへ旅立った。一人の部屋は、あまりに寒い。「あ〜、早く帰ってこないかなぁ」 | |
「そうだ、ラジオを聞こう」 「はーい、皆さんこんばんはー。司会はわたくし、なにわの夜のみのもんたことDJゴドーです」 | |
「そっか! (DJゴドーの人生相談回答を聞いて、激しくショックを受け)見事だよ、ゴドーさん!」 すると、音楽にのって、夢のようにジュンコさんが戻ってきた。 | |
一瞬の暗転ののち…… | |
あら、二人が入れ替わってる! | |
「ガラガラガラ(と戸を開ける)、あれ、マチコさん、泣いてたの?」 「おかえり、ジュンコさん。泣いてないよー」 ジュンコがマチコで、マチコがジュンコ? | |
DJゴドーのラジオは続く。「はい、次のおたよりは、サミュエル・ベケットさんから。いま『ゴド侍』という舞台をつくっているのですが、これは『ゴドーを待ちながら』という有名な作品をモチーフにしています。ゴド待ち、というのは、二人の男が顔も見たことのないゴドーさんをひたすら待ち続ける、というそれだけの話なんですが……」 マチコ「へー、ゴド待ちっていうんだ(といいながら天板に「ゴド侍」と書く)」 ジュンコ「字、まちがってる。それじゃゴド侍だよ。待ち、はこう(と書き足す)」 | |
「マチコさん、ミカン食べる?」 「食べない。ミカンきらいだもん」 「あぁ、すっぱいのダメって言ってたよね」 「でもパイナップルは好き」 「パイナップルねぇ。パイナップル、る、る、る、ルビー」 「ルビー。はい、イ、ですよ(とお客様にふる)」 突然始まったしりとりが、お客様をまじえて、続いていく。 | |
「○○○○ん!」 あぁ、しりとりが終わってしまった! 暗転。 | |
ありがとうございました! |