「政権交代」と「大連立」

下記は、約二年前の、民主党が政権をとった直後に、僕がとある読者限定ブログに書いた文です。
最近、政局のほうで「大連立」とか言ってるようで、それに関係すると思ったのでここに再掲します。
なお、下記の文の内容は、大きくは間違っていないと思いますが、正しいと保証できるものでもありません。あくまで僕の個人的理解だととらえてください。

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◎「政権交代」の件◎

「政権交代」っていうのは大げさじゃないのか。政権政党名は変わることになるが、所属している政治家は 自民党と民主党で激しく行き来している。だから、「1955年から続いた自民党体制が変わる」っていうの は、あきらかに誇大表現である。

乱暴な言い方をすれば、現在の民主党は、だいたい自民党の旧・田中派である。小沢一郎なんて、旧・田中 派(後の竹下派)の、超重要人物であった。いっぽう、現在の自民党は、おおむね、旧・福田派である。田 中角栄と福田赳夫は、その昔、「角福戦争」と言われるほどに対立していた。が、それも、同じ自民党の内 部の話である。

両派は長い間、政策路線は異なるものの、どうにか協調して自民党を維持させてきた。しかし、1993年の非 自民連立政権の成立あたりから、田中派系(竹下派)の自民党からの流出が始まる。この頃に自民党を離れ て「新生党」とか「新党さきがけ」とかを作った人たち(小沢一郎、羽田孜、鳩山由紀夫ら)が、現在の民 主党の幹部になっている。

その後も田中派系の自民党からの流出は続くのだが、それを決定的にしたのが、福田派系(森派)の小泉純 一郎である。小泉は「郵政改革」を旗印に、旧・田中派系を「刺客」(後に小泉チルドレンと呼ばれる)に よって追い出し、日米同盟重視、軍事増強、官僚弱体化、という超タカ派路線の、新しい自民党を作り上げ た。小泉自身が「自民党をぶっ壊す」と言っていた通り、ここで本当に自民党はぶっ壊れた。そして、この 時に議席を失った多くの元議員が、小泉改革批判を展開し、また一部は民主党にも流れた。そうした結果 が、今回の民主党大勝である。小泉チルドレンは、今回ほぼ全員が落選した。

だから、見かけ上、政権政党の名前は「自民党」から「民主党」に変わるわけだが、実質としては、小泉が ぶっ壊した自民党が、もはや信任されなかったということであって、政治の流れとしては、どちらかという と、「交代」というよりは、「元に戻る」ということに過ぎない、と僕は見ている。

まあだから、あまり極端には変わらないでしょう。とりあえず、このところ続いていた、アメリカへの過度 な追従路線、自己責任論、社会凶悪化妄想、警察力強化論などのコイズミ的なファシズム指向だけは、少し 弱まってほしいと、期待したいものである。

(Mon, 31 Aug 2009 12:09)


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30年以内に大地震が来る確率が87%、の件

「30年で大地震の確率は87%」に対する、竹中平蔵のコメントが、だいぶ話題になっているようである。

http://togetter.com/li/133823

「結局どうなの?」と疑問が消えないあなたに、数学専攻の私が、きちんと解説してさしあげよう。

この問題がクセモノなのは、「○○年以内に○○が起こる確率」というのを扱っている点である。確率というのはそもそも、「すごくたくさん繰り返したとすれば、どれぐらいの割合でそれが起こるか」を説明する理論であって、この場合の「大地震」のように、滅多に起こらないことを説明するのは、本来の確率論からは外れる、という理解を、まずしていただきたい。本来の確率論から外れているので、地震が起こる確率というのは、そもそも数学の話ではない。

とはいうものの、この87%という数字だって、それなりの根拠を持って計算しているわけだろうし、それは、数学の定義による元々の「確率」の定義とは違うだろうけれど、一応、それなりに信頼できる、「確率っぽい」数字なのだろうと思われる。だから、それをないがしろにする気は、もちろんない。

以上は前置き。これからが本題。上記の前置きは、以下の本題には関係しないので、忘れても可。

えーと、「30年以内に大地震が来る確率は87%」。実にわかりにくいですねぇ。とりあえず、「大地震」だとわかりにくいから、「死ぬ」にしましょう。

「30年以内に死ぬ確率は87%」。この命題を考えてみます。

ほぼ間違いない予想:「僕が、500年後も生きている確率は、0%」

これは、わかりますよね。僕は、今、46才です。

「46才の人が、500年後も生きている確率は、0%」

これは、ほとんど絶対に正しい。まあ、本当に絶対ではないけど、ほとんど正しい。

歴史上、最も長生きした人は、何才まで生きたでしょうか。聖書の世界では何百才とかあるようですが、そういうのは別として、近代的な記録の中では、122才というのが、最高齢の記録らしいです。そうすると、

「現在46才の人が、100年後も(つまり146才まで)生きている確率は、0%」

これも、ほとんど正しいですね。46才の僕は、100年後は、まず間違いなく、死んでいる。

じゃあ、現在120才の人について、

「現在120才の人が、30年後(つまり150才まで)生きている確率は...」
これも、かなり0%に近い数字でしょう。だって、過去の最高記録が122才なんですから、150才っていうのは、やっぱり無理がある。だから、120才の人が、30年後も生きている確率は、ほぼゼロ。

じゃあ、現在5才の子供について、

「現在5才の人が、30年後(つまり35才まで)生きている確率は...」
これは、かなり高い。99%ぐらい? もっと高い?

さて、「30年後に生きている確率」の逆は、「30年以内に死ぬ確率」ですね。つまり、上記が正しいと仮定すると、

・現在120才の人が、30年以内に死ぬ確率は、ほぼ100%
・現在5才の人が、30年以内に死ぬ確率は、1%以下

とすると、120才と5才の間のどこかに、「30年以内に死ぬ確率が、87%」になる年齢が、あるはずです。ちゃんと計算すれば算出できるんでしょうけど、仮にそれが70才ぐらいだと仮定することに、それほど無理はないでしょう。

※現在70才の人が、30年以内に死ぬ確率は、87%・・・と仮定する

現在70才の人が、30年以内に死ぬ確率が87%だとして、じゃあその人が1年以内に死ぬ確率は? それはかなり低いですね。でも、1年以内に死ぬ確率が、87%÷30=2.9% だっていう計算も、なんか違う感じがしますよね。そう、だから、たしかに、単純な割り算ではない。でも、87%を30で割るというのが、むちゃくちゃ間違ってるとも言えないっていう感じはするでしょう?

要するに、30年以内に死ぬ確率は87%だとしても、この1年、あるいはこの一ヶ月に死ぬ確率は、具体的な数値はわからないけど、かなり低い。もちろんゼロではないけど、かなり低いじゃねえの。というのが、竹中平蔵の主張です。

竹中平蔵が言っているのは、浜岡原発を、「今すぐ」止めるのも「一ヶ月後に」止めるのも、たいして違わないだろう、っていうことです。その主張は、「確率」の取り扱いだけで言うなら、ほぼ正しい、というのが、正解です。

おわり。

あ、ちなみに僕は個人的には竹中平蔵は、嫌いです。


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菅首相の「要請」の目的

菅首相の浜岡原発停止の「要請」について、浜岡原発の地元自治体の長が「浜岡だけ止めろというのはおかしい。止めるなら全原発を止めるべき」と言っているそうである。

原発はその土地の重要な「産業」であって、それを停止すると、そこで働く人を中心に、経済的なダメージがある。全国のすべての原発を止めようという話なら、それは国の原子力政策全体を見直さざるを得なくなるので、全国規模で原子力産業の経済への影響を考えることになるが、もし浜岡だけを止めるとなると、浜岡の地元だけが割を食う形になる恐れがある、というのが、地元市長の発言の意図だと思われる。

さて、停止の要請を受けた中部電力は、実際に浜岡原発を止めることができるのだろうか。中部電力としてもこれは大きな経営判断である。そう簡単には決められまい。

世論が全体的に反原発に傾きつつある今、仮に首相の要請通りに中部電力が浜岡原発を停止させれば、それは菅首相の要請が効果があったということで反原発派の世論には歓迎されるだろう。しかしその結果、中部電力の会社経営に深刻な影響が出るのは間違いない。

いっぽう、中部電力が要請を断り、浜岡原発の稼働を続けるという判断をしたとすると、菅首相は要請を無視された形になるが、おそらく「中部電力の民間企業としての判断なのでやむを得ない」といった態度に出ることにより、反原発派の世論の攻撃を中部電力に向けさせる作戦に出るであろう。

つまり、実際に浜岡原発が停止されようとされまいと、どっちにしろ菅首相はポイントを上げ、中部電力には打撃となる。菅首相は中部電力をダシにして、支持を維持することに成功することになる。政治家の「やり口」としては、なかなか「したたか」であると言えるだろう。


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内閣府原子力委員会に意見を投稿した

内閣府原子力委員会の「国民の皆様からのご意見募集」

http://www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/tyoki_oubo.htm

これに投稿しました。

投稿した全文は下記の通り。概要は100字以内、意見本文が800字以内という制限がありました。
この字数制限が、意外ときびしかったです。

名前:岩城 保
年齢:40代
職業:舞台照明デザイナー

意見の概要:
全国の原発を、実験的に期間限定で一時的に一斉に停止してみることを提案します。

意見及びその理由:
今は、原発の価値や効力を、国民全体できちんと検証することが必要だと思います。そのため、全国の原発を、期間を区切って一時的に停止してみることを提案します。そのためには、全国規模の計画停電などが必要になるのかも知れません。しかし、期間限定で実験的に全原発を停止してみて、その結果を全国民で検証してみて得られるものは、一時的な原発停止で失われる諸々の損失を上回ると思います。原発の「廃止」ではなく「一時停止」の提案です。福島の原発周辺住民が大きな負担を強いられている現状、これくらいの実験は、国民も了承してくれるのではないでしょうか。この実験によって、原発を停止することの影響の大小を国民一人一人が実感した上で、再び原発を稼働して現状に戻して議論を続けよう、という提案です。原発推進派も反対派も、この実験的プロジェクトによって失う物は何も無いと思います。是非ご検討下さい。



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放射性物質の拡散予測が出てこない理由(推測)

僕はテレビも見ないし新聞も読まないので、世間様の雰囲気はあまり知らないんですが、ネットニュース等を見ていると、「放射性物質の拡散予測がなぜ公式に発表されないのか」という疑問が、だいぶ高まっているようですね。

僕は、この疑問には、ある程度答えられます。もっとも、ネットでこういう不確実な情報は出さないようにという通達もあったと聞きますので、僕がここにこういうことを書くと、僕が利用しているプロバイダに迷惑がかかっちゃうのかも知れませんが。まあでも、僕が以下に書いている内容は、報道などで公開されている情報に基づいて、僕の「理系の頭」で論理的に推論したものですので、デマとかとは違います。僕なりの「推測」です。信じるかどうかは読んだ人の自由です。たぶんそれほど間違ってはいない、という自負はあります。

さて、本題です。

放射性物質の拡散予測を、いまだ、なぜ出せないか。それは、結論から言うと、「わからないから」です。「どこまで公開して良いか意見が分かれてる」とか「パニックを恐れて隠してる」とか、色々と適当なこと言う人がいるようですが、それらはみんな、たぶん違います。本当のところは「わからない」んだと思います。なぜ「わからない」かというと、「まだ火消しの真っ最中」だからです。

たとえば火事で数軒の家が燃えている状況だとして、その消火作業が続いているときに、その消火作業をしてる人に「この火事はどこまで拡がることが予想されますか」なんていう質問は、ちょっと聞きづらいですよね。それでも、仮に頑張って正確に答えようとすれば、「現在の消火作業がうまく行けば、これ以上には火は拡がらない。しかし、消火作業が成功しなければ、どこまで燃え拡がるかわからない」というような答えになるでしょう。

火事にたとえるのはちょっと乱暴かも知れませんが、今の福島原発も、だいたいそんな感じだと思います。福島原発の核燃料は、まだ「火事」の状態で、「収まるのか」「どこまで拡がるのか」という質問には答えられない状況が続いていると思われます。

原子炉(1、2、3号炉)の中心にある核燃料は、現在も非常に高温で、中心部はおそらく二千数百度、溶けて液体になっています。その周囲を、固体を保った燃料が包み、そこに水がかけ続けられている、という状態だと思われます。

で、今は、核燃料に「水をかけている」状態で、上部は空気中に出ているわけです。だから温度が下がらない。これをまず、上部まで完全に「水没した」状態にして、さらに、その水を循環させて、つねに「流水の中にある」状態になって、初めて、一応は安心な状態、すなわち「冷温停止」になるわけです。

外から水をかけ続けるんじゃダメなんです。かけた水は放射能で汚染されますから、捨てられない。だから汚染排水がどんどん増えて貯まっちゃうか、あるいは、蒸発して大気に拡がっちゃう。だからそうじゃなくて、汚染された水を外に出さず、ぐるぐる循環させる必要がある。核燃料に触れて熱せられた水を、パイプで外に引き出して、海水の中を通して冷やす。冷やされた汚染水を原子炉に戻して、また燃料を冷やす。そういう「汚染水の循環」が確保されて、初めて「冷温停止」と言える状態になる。いや、僕も専門家じゃないから知りませんけど、公開されている情報からきちんと推論すると、そういうことなんだと思います。

原子炉が「汚染水の循環」を確保するまでには、まだ何ヶ月もかかると予想されています。その間に起こり得る、「最悪の事態」としては、まず、核燃料を内側で密閉している構造(原子炉圧力容器)が、溶けた燃料の高熱で破れて密閉が保たれなくなる。さらに、それを囲む外側の密閉構造(原子炉格納容器)に水素ガスが充満し、それが爆発(水素爆発)して、放射性物質が一気に周囲に飛散するという状況、これが想定される一番「最悪の事態」で、万が一そうなったら、ほぼ「チェルノブイリ」です。チェルノブイリでヨーロッパ全体の汚染が問題になったように、今度は東アジア全体の汚染が問題にされる。「消火活動」がうまくいかないと、最悪、そういうことは起こる、それが「完全には否定できるとは言えない」というのが、今の状況、だと思います。

いっぽう、現在行なっている作戦が最もうまく進行した場合は、「今が最悪の状態」で、これからは良くなるいっぽうである、それも十分考えられます。原子炉圧力容器も、格納容器も無事なまま、水の供給・循環が確保されて、最終的に1~3号機のすべてで冷温停止に成功する。格納容器が傷ついている2号機(そのため今は汚染された水が漏れ続けている)についても、その修復ができ、汚染水の流出も止まる。そのように、「すべてが成功する」という可能性も、時間はかかるでしょうが、十分高いと思います。

さて、じゃあ今は、どういう想定をするべきでしょうか。最悪の事態を想定して、原子炉自体が水素爆発で破壊され、内部の放射能が飛散して、東アジアが汚染された場合の「最悪の事態を想定した放射性物質の拡散予測」を、政府は今すぐ出すべきでしょうか。僕はそれはちょっと、どうかと思います。政府発表は、やはり、「確実な予想」にとどめ、「最悪のシナリオに基づく」予測は、いたずらに出すべきではないと思います。「公式」な発表としては。しかし、政府からは自由な立場にある、民間や機関の研究者とかが、「最悪の場合」という但し書きをきちんとつけて、そういう予想を出すのは、当然「あり」だと思います。

でも今回は、そういうのも「なし」、現時点で「はっきりしている」情報だけを、皆さん出すように、と、いう通達が出たようですね。それが、今の政府の方針、ということなんでしょう。そんなことするから、誰も、何も、信じられなくなっちゃったわけです。

みなさん、僕の話も、あんまり簡単に信じちゃダメですよ。

(以上は、原子力はまったく専門外の僕が、まったく個人的に推測したものですので、この文章の記述を、何かの主張の証拠資料にしたりは、決してしないで下さい)


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