スタジオ走り穂のカーテン

「スタジオ走り穂のカーテン」の写真
サイズ約500cm×250cm
作成期間2005年2月〜9月
ピーシングミシン縫い
キルティングミシン縫い
私の所属する劇団青年団が、新しく、小さなスタジオを持った。壁1面が鏡で、そこを覆うカーテンをパッチワークで作ってほしいと、内装を担当した美術家(杉山至)から依頼され、有賀千鶴さんと2人でこのカーテンを作ることになった。

至さんから「宇宙」そして「穂」という感じにしてほしいと言われ、インターネットで稲穂の写真を探したりしながら私が全体のデザインを考えた。私のラフスケッチを、有賀さんが、何分の1とかのキッチリした図面にして、ここは何色というのもきれいに塗ったものも作成してくれた。自分一人でやるんだったら、だいたいの方向性だけ決めて後はピーシングをしながら即興でデザインを決めたり変更したりしていっただろうと思うけれど、今回は2人で進めることになっているから、そういうわけにもいかない。窮屈に感じないこともなかったけれど、自分とはちがう有賀さんの色づかいを見るのは楽しく、キッチリさんとテキトーさんのコラボレーションでも統一感のあるものができていくところが興味深かった。

左のほうは「稲」から連想した「稲妻」、右のほうは「穂」のイメージである。ところどころにある、薄い色の正方形のものは、「星」。写真では右端がピアノで隠れてしまっているが、そのあたりにももう1つ「星」がある。最初私は、星を、エメラルドグリーンなどの彩度の高い宝石っぽい色にしようと思っていたのだが、至さんから、モノトーンぽい方向でと言われ、そのようにした。それで正解だったと思う。

ピーシングは、有賀さんと私で分担しておこなった。有賀さんは、衣裳関係の経験は豊富だがパッチワークははじめてとのことだったので、まず1度ログキャビン(細いひも状の布を縫い合わせて作る正方形)の縫い方を私が教え、後は各自自宅でそれぞれピーシングに励んだ。有賀さんも私も、演劇の公演やら稽古やら作業やらがあって、その合間合間にこのカーテンを縫っていたので、なかなかはかどらなかったが、8月にようやく各パーツ(1枚を4つ程度に分割して作成していた)のピーシングが終わった。その後の作業(全部縫い合わせてトップを完成させる、裏布と合わせてフリーモーションキルティングを掛ける、カーテンに仕立てる)は、私が担当した。途中でミシンの調子がおかしくなり、縫えない日が続いたときが、いちばんつらかった。インターネットで調べたミシン屋さんにあちこち問い合わせて調子が戻ったときは、ホントに嬉しかった。

このカーテンは、左右2枚に分かれている。1枚のサイズが、およそ2.5mX2.5mで、トップと裏布が重なってるわけだから、相当の重量だった。キルティングするときにはダイニングテーブルの上に乗りきらないその布の重さが膝にもかかってくるし、夏で暑いし、結構な重労働だった。でも、布の作る模様に沿ったり無視したりしながらミシンでガンガン好きなようにキルティングしていくのは、なかなか楽しい作業でもあった。

とはいえ、完成して納品したときには、もうしばらく布やミシンは見たくないと思った。こんなに長い間細々と作業を進め、ずっと気にかかった作品は、この他にはない。こんな大きな作品を作ったのも初めてである。

この写真を撮った後で、中央部にマジックテープを付け、きっちり閉まるようにした。

(2004年9月)









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