アスクルで買った段ボールも使い切り、家の人が商店街から空き箱をもらってきてくれた。長野の学校の夏休みは8月20日くらいで終わってしまうので、長野出身の私は「8月31日」という日に特別な思い入れはないのだけど、きょうは、全国の多くの小中学生も泣きながら(?)ラストスパートがんばってる日なんだなぁと思うと、仲間のような気がして、がんばれるような気がした。
といいながら、夜も更けてきて、まだ荷造りは終わらないんだけど、もうどうにもこうにも手も頭も働かなくなってしまい、「あした、起きてから、やります」と言って寝てしまう。
洗濯と、荷造り。プチプチ(緩衝材)が足りなそうになってきて、アスクルは明日は日曜日で配達がないとのことなので、家の人に頼んでハンズから買ってきてもらう。今回の引っ越しは、段ボールもプチプチも、アスクルで買った。贅沢といえば贅沢なのかもしれないが、「足りないかも」「壊れるかも」というストレスなくどんどこ荷造りができるので、気持ちは楽である。
8時新宿着。東京は、利賀よりも暑く、でも、風がすでに秋の風っぽかった。
バスの中でよく眠れたので、寝直さずに引っ越しの荷造りに取りかかるが、3時過ぎにダウン。3時間ほど眠って、再開。段ボールは次から次へできていくけど、部屋の中はさほど片づかない感じ。やっていれば、いつかホントに終わるんだろうか。いつかっていうか、9月1日には引っ越すんだけど。
午前中は、きのうと同様、パソコンで作業。午後、大学生の創作の発表。場所の選び方がうまい。感心する。夜、打ち上げ。そして、11時にバスで東京へ。
午前中の予定がなくなり、稽古場施設内の静かなところをさがして、ここ数日の日記を書いたり、戯曲翻訳を少し進めたり。トリシアに会ったので、きのうのワークショップの感想を述べる。目をつぶって人に手を引いてもらったとき、相手を完全に信頼して、危険なくらいに安心な気持ちだった、演劇のワークショップとわかって参加しているからいいけど、一歩まちがえばカルトにつながるような怖さだった、ということ。いろんなゲームをまずやって見せるトリシア自身が、すーごく自信満々というのではなくて、恥ずかしがったり怖がったり(演出かもしれないけど)して取り繕っていないので、参加者の私も素直な気持ちでとりくめた、ということ。
午後は、『忠臣蔵』の自主稽古、プール、温泉。明るいうちの露天風呂は、またちがった雰囲気だった。
夕食後、トリシアのワークショップ。身体的なことに加え、きょうは、音声(サウンド)を使う、物(オブジェクト)を使う、ということをやった。長方形の大きな和紙の短辺の真ん中をぎゅうっと絞って「ここが頭」、その両端を細く形作って「腕」、残った角2つもぎゅうっとして「脚」。そうやって作ったパペットを、4人(それぞれ、頭と片手、もう一方の手と胴体、左右の脚を担当する)で操作する。操作する人がパペットを常に見ているようにする、操作者の指や身体がパペットより前に出ないようにする、胴体から上の部分で脚部を引っ張りあげるように力をかける(と地面にしっかり立っているように見える)、といったコツを教わって、それに気をつけて動かしていくと、パペットに不思議な生命感がある。
プロの公演でこういうのを使っているところはたくさんある、演劇は手品と同じで、ただ見ていると不思議だけれど、タネを知ってしまえば実は簡単なことなんだ、とトリシアは言う。
しかし、きょうのワークショップは、動きがけっこうハードで、あせびっしょり。着替えて、『忠臣蔵』、『革命日記』の稽古。『忠臣蔵』は大石登場の前まで、『革命日記』は2場のアタマまで。合宿中の稽古はこれで終了となり、急にあす一日ぽっかり空いてしまった。
午前中、また話し合いから始める。設定について、武器の管理をする部署(で係りの兵たちが武器の整備をしている)、武器倉庫(に装備の補充にきた兵たちが、自分の武器の整備をしている)、兵舎(で兵たちが、自分の武器の整備をしている)という3つの案が出てきたので、演出家に、どうでしょうと聞いたら、「兵舎」と言われたので、その線でまた考える。
きのうまで、銃(に見立てた板切れ)は使っていたけど、もっと武器が要るということになり、300ml(?)のアルミの飲料容器(ちっさいペットボトルの、アルミ版、みたいなやつ)を缶のゴミ箱から拾ってきて「手榴弾」にする。また、トレーニングしてる人とかいてもいいね、ということで、同じ容器を2つずつ繋げて、「ダンベル」も作成。俳優が5人しかいなくて、冒頭から大石登場直前までしかやれないんだけど、とにかくそこまではなんとかやれるように練習。
午後、気分転換もかねて、隣のプールに泳ぎに行く。いつもは小学生でにぎわっているんだけど、きょうは午前中に水泳教室があったそうで、午後のプールは、私と、一緒に行った友と、二人で貸しきり状態。前回、あまりの体力低下に愕然としたんだけど、きょうはそんときよりは泳げるようになっていた。引越し先で、近所にいいプールがあれば、続けて通うようにしたいなぁと思う。
夕食後、桜美林生に混じってトリシアのワークショップを受ける。きょうは「信頼」ということを中心としたプログラム。たとえば、一人が目をつぶり、もう一人が腕をとってリードする。ゆっくり歩き始め、大丈夫という気持ちになってきたら速度をあげ、最後は、走る。支えるのも、最初は腕、それから手だけ、慣れてきたら手を離し、方向転換するときだけちょっと触る、というふうに、接触をだんだん少なくしていく。相手を信頼して目をつぶって歩き回り、走り回るのは、ちょっと「やばい」くらい安心な気分だった。この人は絶対自分を危険な目に合わせないという、子供のとき持ってたみたいな安心感だったんだと思う。交代して、リードする側にまわってみると、目をつぶっている人もさまざまで、どんどん先に立って進んでいく人もいれば、おそるおそるゆっくりとしか歩けない人もいる、というのがわかった。
前方で待ち構えていて止めてくれる人がいる、という状態で、目をつぶって走っていく、というのもやった。勢いよく走り始めても途中で自分から止まってしまう人、前傾姿勢からだんだんそっくりかえっていく人、速度を落とさず走りこんでいく人。ほかにも、高い位置から、人々が腕を差し伸べているところに「ダイブ」するというのや、前後左右にぐらぐら揺れて倒れそうになる人を周りを取り囲んだ人々が手で押し戻すというのや。とにかく、一緒にやっている人たちを仲間と思って信頼する、ということを1時間半にわたって、いろいろと、やりました。
夜の稽古。『忠臣蔵』では、ようやく4人め、5人めの侍が出てくるところまで演出がついてきた。『革命日記』でも私の出番の部分があった。
何にせよ、その過程の中で、もう最低、最悪だ、と思う、どん底のポイントというのがある。その後、物事はよくなっていく。きのうがそういうどん底ポイントできょうからは上向きだ、と思おうとするけれど、気持ちの切り換えがなかなかうまくいかず、朝のうち、沈んでいた。だけど、『忠臣蔵』チームにきょうから演出部の人もひとり加わって、皆で、この舞台はどういう場所だということにしようか、というところから話し合いを始めて、ああだこうだとアイデアを出していくうちに、また楽しくなってきた。
やっていることを楽しめないと、うまくいかないものなぁ。谷川雁が、「役者は、いつも上機嫌でなくてはいけない」と言ったということを、昔だれかから聞いたけれど、役者に限らず、人間、いつも上機嫌でいるほうがうまくいくような気がする。なかなかそういかないからむずかしいんだけれど。
午後、きょう到着した桜美林の学生やワークショップ研究会の演劇人と一緒に、トリシア・リーさんのワークショップに参加させてもらう。子供たちを対象にしたワークショップをたくさんやっていらっしゃる方とのこと。うまくまとまらないけど、印象に残ったことなどを少し書いておくと:
まず、自己紹介もかねて、「名前ゲーム」をした。みなで中を向いて輪を作り、順番に真ん中に出て行って自分の名前を言いながら何か一つポーズを作る。と、まわりの全員がそのポーズをとって、その人の名前を3回言う。
「人によって、輪から、真ん中まで出て行くのが、平気な人もいればすごく恥ずかしい、怖いという人もいると思う。でも、輪の中心までの距離は、だれにとっても同じ」
だから、がんばって、ということ。そして、この距離は、子供たちが初めて舞台に立つときにたどっていく道のりであること。
1つのボールを、みんなで打ち合って、床に落とさないようにする、というのもあった。
「このボールは、『演劇』です。みなでそれを支え、落とさないようにする」
青年団の稽古では、俳優同士で何かするというよりも、一人ひとりの俳優が、それぞれ、演出家と自分、という関係から演技を立ち上げていく部分が大きい(と少なくとも私は思う)ので、演劇ってみんなで作っているんだ、というこんな単純なことを思い出させられて、涙が出そうに感動してしまった。
夜は、『忠臣蔵』と『革命日記』を演出家に見てもらう。『忠臣蔵』は、きょうの日中の話し合いで、野戦病院というか、衛生兵がいて怪我の手当てとかしてくれる場所ということにしてやったんだけど、
「実際戦わないんだから、怪我という設定は、ダメ」
と言われ、またあした考え直すことに。でも、台詞の言い方とか演技についての稽古は進んだので、達成感はあった。
皆、だいぶ台詞が入ってきたので、一度演出家に見てもらう。今回、『忠臣蔵・ミリタリー編』ということで、なんとな〜く「兵舎」っぽい感じのイメージはあったんだけど、具体的な小道具とか動作とかでどう「ミリタリー」にするかというところまではまだ進んでなくて、というか各自自分のことで精一杯で全体的な設定を皆で話し合うというようなアプローチ自体に考えが及ばず、どこがミリタリー?という感じになってしまった。案の定、「あまりミリタリーっぽくない」と言われ、銃を磨いたり手榴弾の整備をしたりする、入ってきたとき敬礼する、という指示が出た。また、「感情だけで台詞を言っている。組み立てを考えなくてはダメ」ということも。
『忠臣蔵』(平田オリザ・作)の台詞にあるとおり、目的・目標をはっきりさせないと、物事はうまく進まない。やみくもに努力しても、ダメだ。そのことを痛感する(あぁ、すでに合宿も後半に入っているのに!)。
きょうは学生もいないし、『南島俘虜記』組も休養日で稽古をしていないので、稽古場が急にがらんとしていて、ちょっとさびしいような、でも、静かで落ち着くような、ちょっと新鮮な感じだった。
稽古の前に、近くのプールに行ってみた。O157が問題になって以来、泳ぎに行くのは、きょうが初めてだった。中学生のとき学校の水泳部に所属していて、私はこう見えてどちらかというと泳ぎは得意なほうなんだけど、数年ぶりに泳いでみたら、体力の低下に愕然とした。水着も、何年もほうっておいたあいだに生地だかゴムだかが劣化したようで、すそのあたりがへろへろになっていた。いかん、いかん、こんなことじゃ。
大学の合宿できている桜美林大学生たちの、創作の発表を見る。建物のあちこちの部屋や通路が舞台になっているので、観客の私たちは、作品ごとに館内を移動して、見ていった。7作品。
この学生さんたちは、もう合宿が終わって帰るので、きょうはその打ち上げもあった。いままで4日間、同じ宿舎に泊まって、同じ建物内で日中、稽古したりしていて、なのにまだあまり話をするほどにはうちとけてなかったんだけど、きょう、発表を見て急に親近感がわいて、感想とか質問とか、話ができて楽しかった。青年団は『海よりも長い夜』しか見たことありません、でも、ビデオで『東京ノート』を見ました、という人がいて、私、出てますよ、お姉さんの役、と言ったら、
「あぁ、おいしいですよねぇ」
と言われた。たぶん、いい役ですねぇという意味で言ってくれていて、それは表情からもわかるのでこっちもそのつもりで話を続けたけれど、こういう使い方は初めて聞いた。前に書いた「つっこみ」もそうだけど、私としては「うん?」とひっかかる用法ではある。
『忠臣蔵』Aを自分たちで練習したけれど、アタマから台詞をきっちりやっていったら、4人めの侍が出てくるか来ないかくらいまでしか進まなかった。
きのうも、夜、少し何人かで話したんだけど、台詞をどういう段階を経てどのように覚えていくかというのは人によりものすごくちがう。あぁ、この人はこういうふうに台詞と付き合う人なんだなぁ、という発見がいろいろとあって、おもしろい。
『南島俘虜記』第1回通し稽古を、見る。泣きそうになったり、笑ったりしながら。
そして、念願の温泉に行く。星空を見ながら入浴。無料のマッサージ機もあって、へろへろになって帰る。
その後、『革命日記』を練習。AチームもBチームも、1場はだいたいみんな台詞が入ってきているので、あした演出家に見せるのは、『忠臣蔵』ではなく『革命日記』のほうにすることにする。
自分たちで稽古して、シーンを作ってから演出家に見て演出してもらう、という稽古の方針が決まり、どこをまず稽古するか、みんなで話し合う。
『革命日記』は、1場のアタマからやっていく。たぶん、進んでも2場までだろう。後半(3、4場)にしか出ていない人がいるので、その部分は後半からピックアップして、そこもやる。『忠臣蔵』は、アタマからやるのがいいと思うので、冒頭(3人だけのシーン)とかはそのメンバーで集まって台詞入れをするなどして、とにかく早く立ち稽古ができるようにする。というようなことを決めた。
それから、1日の時間を3コマに分けて、きょうは、「革命A」、「革命B」、「忠臣A」の順にやることに。私は革命Aチームには入っていないので、午前中は一人で台詞入れ。
午後1時間ほど、劇場等の見学に行く人たちが抜けたので、いる人で「忠臣蔵」の台詞合わせもした。
夕食後に温泉に行こうと画策していたら、きょうは温泉が定休日、と知らせがあり、期待が大きかっただけに、がっくりきた。近いうちぜひ行きたいです。
朝9時、利賀着。『南島俘虜記』組は、午後からさっそく稽古開始。私たち創作プロジェクトチームは、自主稽古ということで、まずは、台詞あわせ。台本的には『忠臣蔵』と『革命日記』の2本なんだけど、それぞれ、Aチーム、Bチームとあって、一人の俳優が別の役についている(たとえば、私は、忠臣蔵だと、大石と侍D)ので、4回読み合わせをすることになる。車中で眠れたとはいえ、夕べのバス移動の後なので、出番がなかったりすると、つい眠くなってしまった。
『暗愚小傳』の荷物をトラックから降ろして倉庫にしまう作業に出掛ける。利賀合宿での『忠臣蔵』は「ミリタリー編」だそうで、ミリタリー系の物を持ってきてもらえると助かる(機関銃とか)という指令が、きのうメールで流れたけれど、きのうのきょうでそんなものがそろうわけもなく、でもまぁとりあえずミリタリー調の衣裳くらいは持っていこうかなと、ユニクロを物色。その名も「ミリタリーシャツ」という、肩章のついたオリーブグリーンのシャツと、ミリタリーっぽいカーゴパンツを購入。2点で3,990円。
とにかく、我が家にはミリタリーっぽいものが皆無なので、せめて、
「これって、手榴弾っぽく見えない?」
と家の人に聞いてみたが、
「いや、アーティーチョークにしか見えないよ」
と言われ、プラスティック製のアーティーチョーク(野菜)の飾り物は、持っていかないことにする。
夜11:30、新宿から、バスで、利賀に向け、出発。
マチネなので、早く身体を起こそうと、私としてはちょっとハードにアップする。といっても、軽くランニングしながら台詞を言う、というくらいのものだけど。台詞は、『ヤルタ会談』の自分の台詞を一通り言ってみた。大丈夫、ほぼ全部覚えていた。9月末に山形県で公演があるのです。
『暗愚小傳』は、本番2時。終演後、撤収。6時には終了し、帰路に着く。列車の中で、台本を覚える。あさってからの利賀合宿で練習する分。『革命日記』は、私は隣の奥さんの役だから、わりと普通の日常会話で、覚えやすい。革命家の役の人は、言ってて意味のわからないところがたくさんある、と言っていた。私も、スターリンのとき、そうだった。
『忠臣蔵』もやるんだけど、こっちは、いきなり「お家断絶」とか言われて日常世界から放り出された侍たちの話で、でもその前の「侍の日常」というのからして私とはほとんど接点がないので、とにかく、台詞が覚えにくい。でも、まぁ、『ヤルタ会談』よりは楽かな。
11時過ぎ、帰宅。疲れているのに、寝たくなくて、洗濯やら利賀行き準備やらで夜更かし。
「『ヤルタ会談』の英訳ができました」とお知らせした相手から、メールで、「『ヤルタ会談』のパロディーを書いて、Yalta Ghost Storiesというタイトルにしたらどうですか」と言われたのは、『ヤルタ怪談』というシャレだったのか、と、一週間ほど経過したきょうになって気づく。
『暗愚小傳』は、2時開演でゲネ。公演は7時。終演後、俳優3人によるアフタートーク。青年団津公演を3年連続で観ているという方や、初めて観てすごく驚いたという方や、いろいろな方からいろいろな質問。なぜ俳優になろうと思ったのですかという問いに対する答えを聞いて、あぁこの人はこういうきっかけで演劇を始めたのかというのを初めて知ったりした。
きのうの雨が、今朝になってもまだ降っていた。こんなに降り続けるのはめずらしいと思う。
東京駅から新幹線で名古屋、乗り換えて、津に向かう。青年団自体は何度か旅公演で来ている土地だが、私は、初めて。午後から仕込み。中断して8時過ぎから場当たり稽古。音の入るきっかけとか、衣裳の早換えが間に合うかどうかの確認とか中心に、とばしとばしで最後まで。
『暗愚小傳』三重公演の、トラック積み込みに行く。
帰ってきて、ちょっと休んで、日舞のお稽古。「手習い子」は、お師匠さんにお辞儀をするところまで進んだ。でも、なかなか振りが覚えられない。そしてその直後に「黒田節」をやったら、さっきは7歳くらいの女の子だから座るんでもお尻をぺたんと落として座ってたのが、今度は武士だからバーンと堂々とした正座で、急にぜんぜんちがうからちょっとなにがなんだかわからなくなったりした。
Happy International Lefthanders' Day!
左利きの日、おめでとう!
とあるメールマガジンを解約しようとしたら、パスワードを要求されたが、忘れてしまっていた。忘れた人はこちらにどうぞ、というとこに行ったら、本人確認のため、あらかじめあなたが設定した質問をしますので、答えてください、とのこと。以前は興味があったけど最近はそれほどでもない事柄に関する質問で、1回、答えをまちがえてしまった。この機会に質問を変えようかと思ったんだけど、よい設問が思いつかなかった。スタートレック関係にしたかったけど、トリビアは、調べたらわかっちゃうからね。
写真屋でもパン屋でも、レジ係がもたもたしていた。夏休みのバイトさんなのかな。
「プライベート日誌」というコトバと出会う。最初、ウェブに日記書く人が多くなってきて出てきたコトバなのかなと思ったけど、でも、考えてみると、「先生に提出する」用や「係りで共有する」用じゃない日誌、って意味だとすれば、こういう言い方、昔からあったのかもしれない。
今月のイラストを描く。「泰子」は、『暗愚小傳』の登場人物で、若いお手伝いさんだ。買ってきた饅頭がないと指摘されて、泣きそうな、不満そうな、すんごい「見ぐさい」(長野では、そう言います。共通語だと、なんだろう、「みっともない」だと広すぎるか?赤ちゃんがして、「変なお顔しないの」って怒られるときみたいな顔なんですけど……)顔をする。そこのところが描きたかった。見ぐささは少し描けたと思うけど、演じている端田新菜ちゃんとは似ても似つかない顔になってしまった。
テーブルの上のビンに、たぶん私の身体のどこかが当たったんだと思う。床に落ちたビンから、どろーり流れ出る白っぽい液体。うわー、北海道で買った馬油(友に、「えー買ったの?東京でも買えるのに」と言われましたけどね)! 1,000円だったのに、930円分くらいはこぼれてしまった。フタは閉まってたと思う。落ちた衝撃であいたんだろうか。そして、あたりに立ちこめる、ドーナツのような甘い匂い。あぁー、これって、砂糖の匂いじゃなくて脂肪の匂いだったのね。
物のない台所で、クラッカー砕いて魚フライの衣にしたのは、キャラコさんだったっけか。久生十蘭の小説の。
ポテトサラダを作り始めた後でマヨネーズがないことが判明し、カチャカチャと手作りマヨネーズを作りながら、そんなことを思い出した。オリーブオイルを使ったせいか、黄色っぽーいポテトサラダができた。
長野(実家)に来ている。暑いといっても、長野の暑いのは、東京の暑いのとちがって湿気がないので、すごしやすい。スーパーでスタートレックの食玩(ピンズのやつ)を見つけ、6個買った。ヴォイジャーのや、TOSのや、宇宙艦隊関係のがいくつか出て、嬉しかった。
本を段ボール詰めする。1箱詰めるたびに1〜2冊は読み始めてしまって、はかどらない。
だらだらと、引っ越しの準備をしたり、利賀合宿でやる台本を覚えたり、日舞のおさらいをしたり。
地下鉄に乗った。寒かった。今年の夏は電力不足が予想されるので節電に努めなさい、みたいなことが言われているけど、だったら、まずは、サラリーマンのスーツとネクタイをやめたらいいと思う。そしたら、あんなきつい冷房は必要なくなると思う。
地下鉄といえば、車内でのメイクを「迷惑と思う人もいる」っていうポスターがあった。「みっともない」ならわかるけど、迷惑というのは、どう迷惑なんだろう。ひじとか、場所をとるからかな? 私は、おもしろくて、じっと見ちゃう。メイクのコツをつかんでやれ!とも思う。
THE SHAMPOO HATの赤堀さんが俳優として出演している公演を観にいった。シアター風姿花伝こけら落とし公演『紙風船』『蝶のやうな私の郷愁』。『蝶〜』は、ご飯を食べるシーンがあって、食器はあるけど食品は無対象。透明でからっぽな醤油差しから醤油をつぎ、実体のないのおかずを口に運ぶ。食事の内容や味への言及があるので、特に不思議な感じがした。そういうリアリティの作り方なんだな、と思って見ていると、ラスト近く、金(かね)の洗面器にぽつ、ぽつと落ちる水音。その二つのリアルさの差異が、印象に残った。
『紙風船』は、80歳近い俳優の二人芝居で、ぱぁーっと明るい舞台にぱぁーっと二人がいて、お話自体はアンハッピーエンドなのかもしれないけれど、いつまでも見ていたいような楽しさだった。
『手習い子』の振り付けのことを、前に日記に書いたはず、と、探す。2002年2月3日のところにあった。ちょうど、おととい復習した部分だ。日記を見ながら、振りを復習。
夜、日舞の稽古に行く。きょうは、もう少し先に進んだ。といっても、以前すでに習ったところではある。今月はあと1回しかお稽古に行けないので、まだまだ最後までは行けなさそうである。昨年の日記の記述が、今回の復習に役立ったので、きょうやった分も合わせて、あらためて書いておくことにする。
お師匠さんも、振りが思い出せないとノートに何やら書いてあるのを見ているので、どういう書き方をするもんなんですか、と聞いてみたけれど、何か決まった方法があるわけではなく皆一人ひとり工夫しているようだ、ということだった。人形を描いたり、このポーズはこの記号と決めておいたり、とのこと。私の場合は、全部コトバに変換しとくのが、思い出しやすいようだ。
- ポーズ
- 両手クロスして、右手背負って、ポーズ、首(右から)
- 右手にお習字帳、左手に傘(傘は肩)、首(右から)
- 下手に行ってご挨拶
- 上手に行ってご挨拶
- センターで、傘立てて、首(右から)
- おすべり3回
- 左1歩出して
- 首(左から)→花びら気づく(傘肩へ)
- 拾って、ふぅ、首(左から)
- おすべり6回
- 右1歩出して、自分を指さす
- 髪、首(左から)
- 右1歩引いて(傘立てる)
- ととととと前に出て
- 右「うん」左「うん」
- 左足掛けて、後ろ向く
- 右足引いて
- 左側に半円を描くように膨らんで、後ろへ→傘を置く
- 左足前で準備→ターン
- 手(左→右);足(右1歩、左おすべり)
- 手(右→左);足(左1歩、右おすべり)
- 手を手前に引く、左足1歩引く
- センター前に、お習字帳をぱたん
- とれたかな(右)
- とれたかな(左)
- お習字帳をめくってみる
- 逃げた蝶を目で追う(上→右)
- 右手(お習字帳)左手(右袂)で右から6歩ほど
- 左足前で準備→ターン
- 手(左→右);足(右1歩、左おすべり)
- 手(右→左);足(左1歩、右おすべり)
- 手を手前に引く、左足1歩引く
- 上手前に、お習字帳をぱたん
- とれたかな(右)
- とれたかな(左)
- お習字帳をめくってみる
- 逃げた蝶を目で追う(上→右)
- 右手(お習字帳)左手(右袂)で、センターに
- いやいや(身体を左右に振る)しながら座る(お尻を落とす)
- 右手、左手(大きな栗の木の下での「あなたと私」のポーズ)
- 下手見る、上手見る
- 右手を左肩、その上に左手、首(右から)
- こより1(ダメ→膝へ)
- こより2(結んで、くわえて、左手でかざす)
- 右手で輪、首(右から)
- 左手のこよりと、膝のこよりを、後ろにはける
- 右手を左脇、左手を右脇、クロスして開く
- 左手、右手、ぐるっと回して、胸から開く
- 右足下駄履く(内、外、内、よいしょ)
- 左足下駄履く(内、外、内、よいしょ)
- 右1歩、手(交差して開く、右手背負う)、首(右から)
夕べ遅かったわけでもないのに、午前中だいたい寝倒す。旅の疲れが残っているのか。
夕方、劇団の倉庫に、トラックからの荷物の積みおろしに行く。今にも雨が降りそうな中、1時間ほどで作業終了。最後ちょっと降られたけど、だいたい大丈夫だった。フェリー組に、イルカを見た話などを聞く。
本隊はきょう夕方のフェリーで帰るんだけど、私は体力的・気力的にちょっとそれは無理だと思っていて、仕事があって早く帰る人たちと一緒に飛行機で帰ることにしていたので、朝9時に宿舎を出て空港に向かう予定。そのまえに、市場にあるおいしい食堂で朝御飯を食べようと、有志で出掛ける。ホッキ貝のメニューが、いろいろある。ミックス丼(ホッキ、ホタテ、ウニ、イクラ)とホッキ汁を頼む。これも、他の人の頼んだ、ホッキカレー、ホッキ炒飯、ホッキバター焼き定食……も、どれをとっても、これでもかーというくらい具が入っている。そして、おいしい。
私は、青年団の北海道公演に来たのは、今回がはじめてだ。行った人が「北海道公演、北海道公演」と目を輝かせるわけが、来てみてはじめてわかったよ(いえ、食べ物だけじゃないんですけどね)。
飛行機の中でも、離陸する前から寝て、家に帰っても寝て、夕方少し元気になって、日舞のお稽古に行く。去年習い始めた、『手習い子』という曲。きょうは、冒頭から、一回後ろにさがって傘を置くところまでを復習した。汗だく。
旅館の朝御飯をおいしくいただき、10時前に劇場入り。今回の北海道ツアーは3カ所とも宿から劇場に歩いていけるので、助かる。というのは、「稽古開始何時」というのは演出家が見る稽古の開始時間で、俳優はだいたいその前に劇場なり稽古場に行って個人個人でアップ(ストレッチとか、発声とか)をするんだけど、何をどのくらいの時間やるかは人によってちがうので、自分の好きな時間に入れるとストレスが少なくて助かるのです。車で移動ということになると、人数が集まらないと動けないので。
11時開演でゲネプロ。朝早いせいもあって全体に「ゆるくなっている」、「間を詰めて、台詞自体はゆっくり」言うように、とダメ出し。15時開演。幕別、釧路に比べて客席が遠いので、どんなかな、と思っていたけれど、楽しそうに、楽そうに観ていてくださっている感じのお客さまだった。
終了して、撤収。積み込みまで終えて、いったん宿舎に帰って(なにせ劇場の隣の旅館なので、便利)から、苫小牧4丁目劇場や実行委員のみなさんとの打ち上げ会場へ。
このツアーの疲れがどっと出た感じで、朝起きてから午前中いっぱいなんだかローテンションな私。でも、仕込みを繰り返してきているので、担当している作業の手際やクォリティーは、確実によくなっている。というところが、おもしろかった。
3時過ぎに仕込みが大体終了し、場当たり稽古に向けて、休んだりアップしたりしているあたりから、だんだんまた元気が出てきた。6時半から場当たり。出はけの距離とか角度が幕別公演とほぼ同じということもあり、あまり問題なくするすると進み、8時半過ぎにラストまで終了。明日は11時開演でゲネプロ、そして本番が3時と朝の早い一日なので、早めに宿舎に帰って休養。
きのうの続きで、朝から劇場にて撤収。1時間半ほどで終了し、車両で苫小牧に向かう。お昼はおいしい蕎麦を食べた。
5時前に苫小牧に到着し、さっそく、搬入、仕込み。でも、6時半には終了し、今回の公演の実行委員の方々、苫小牧4丁目劇場の方々との交流会。初めて会う人、久しぶりに再会した人と、いろいろ、いろいろ語る。