菅首相の浜岡原発停止の「要請」について、浜岡原発の地元自治体の長が「浜岡だけ止めろというのはおかしい。止めるなら全原発を止めるべき」と言っているそうである。
原発はその土地の重要な「産業」であって、それを停止すると、そこで働く人を中心に、経済的なダメージがある。全国のすべての原発を止めようという話なら、それは国の原子力政策全体を見直さざるを得なくなるので、全国規模で原子力産業の経済への影響を考えることになるが、もし浜岡だけを止めるとなると、浜岡の地元だけが割を食う形になる恐れがある、というのが、地元市長の発言の意図だと思われる。
さて、停止の要請を受けた中部電力は、実際に浜岡原発を止めることができるのだろうか。中部電力としてもこれは大きな経営判断である。そう簡単には決められまい。
世論が全体的に反原発に傾きつつある今、仮に首相の要請通りに中部電力が浜岡原発を停止させれば、それは菅首相の要請が効果があったということで反原発派の世論には歓迎されるだろう。しかしその結果、中部電力の会社経営に深刻な影響が出るのは間違いない。
いっぽう、中部電力が要請を断り、浜岡原発の稼働を続けるという判断をしたとすると、菅首相は要請を無視された形になるが、おそらく「中部電力の民間企業としての判断なのでやむを得ない」といった態度に出ることにより、反原発派の世論の攻撃を中部電力に向けさせる作戦に出るであろう。
つまり、実際に浜岡原発が停止されようとされまいと、どっちにしろ菅首相はポイントを上げ、中部電力には打撃となる。菅首相は中部電力をダシにして、支持を維持することに成功することになる。政治家の「やり口」としては、なかなか「したたか」であると言えるだろう。
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