「セクハラ」という単語はもう、誰でも知っている。他に「パワハラ」という言葉もある。こういった「ハラスメント」について考察するときのポイントは、受け取る側(被害者)がどのように感じているか、ということを重視しなければならない点である。「ハラスメント」の多くは、加害側と被害側で感じ方が異なることが問題の根幹にある。そこで新しく「テクハラ」という造語を考えてみた。
【テクノロジー・ハラスメント】
職務上の地位や社会的な立場を利用し、業務以外の場で、あるいは業務の範囲を超えて、技術の提供を求める行為。テク・ハラ。例としては、子供の勉強を見てもらうために来訪した家庭教師にステレオコンポの配線をさせる、上司が私物のノートパソコンの不調を部下に修復させる、など。
この「テクハラ」は僕もたまに受けることがあるハラスメントである。「要求する側はあまり悪いことだと思っていない」「要求される側はイヤだと思っても断りづらい」など、多くの点でセクハラと共通する特徴がある。過去に僕が受けた「テクハラ」の中で一番ひどかったのは、ある医療行為者によるものである。その診療所には当時定期的に通っていたのだが、診療を受ける際の雑談を通して、僕がコンピュータ技術者であることがその医療行為者に知られるようになった。ある日、いつものように診療時間を予約してそこに行ったら、診療開始前に、患者が入るべきでないエリアに僕を案内し、そこにある自分のノートPCとディスクを示し、「このゲームソフトがうまくインストールできないので見て欲しい」と言う。 こっちは、身体に不調箇所があるから、診療を受けるために、わざわざ仕事の時間を割いてここに来ているのである。また、診療時間の「予約」というのは、その時間に診療するという約束を交わすことである。なのに、予約で来た患者をつかまえて、診療の前に、しかもゲームのインストールについて、技術提供を求めるとは、どういう神経の持ち主か。非常に腹が立った。しかしそれでもその時は、仕方なく言われるままに原因をある程度調査し、うまくインストールできない理由をコメントした(この、どうにも相手に従ってしまわざるを得ない状況というのが、いかにもセクハラに似ている、と思う)。しかし、そのあと診療の時間中に、勇気を出してこの不当な要求について文句を言った。相手は納得せず、非常に不満そうであった。そこではもちろんその後二度と診療を受けていない。ちなみに半年後にそこを通りがかったら、その診療所自体が消滅していた。
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