ナポリ

ナポリに来ています。最初の日から昨日までを日記風に。

28日
朝5時のバスに乗り、成田空港へ。「東京ノート」「ヤルタ会談」イタリアツアーの始まりである。
ツアーメンバーは7時半に成田第一ターミナルに集合。空港まで車で運ばれてきた劇団の荷物(衣装・道具など)を受け取り、チェックイン。さすがに海外公演をたくさん経験して来た劇団なので、この段階でのトラブルはほとんどない。

ローマ行きのアリタリア航空でヨーロッパへ向かう。飛行時間は約11時間。時差がある土地に行く際は、機内でとにかくできるだけ眠るのがポイントである。しかし、機内映画で「スペース・バトルシップ・ヤマト」をやっていたので、つい見てしまう。僕は世代的に完全に「宇宙戦艦ヤマト」世代なので(ブラスバンド部でヤマトの主題歌を演奏したクチだ)、非常に楽しく見ることができた。主人公の古代進、森雪、あるいは空間騎兵隊の斉藤、佐渡医師、アナライザーなどについて、原作から大きくキャラクターを変えることで、見事に現代的な話になっていた。「イスカンダル」「ガミラス」「デスラー」などの設定も、実に思い切って大きく変えていたのが見事だった。設定内容から見て、おそらく「スタートレック」を大きく参考にしたはずである。異星人の設定が、非常にスタートレック的だった。

ローマの空港で約2時間のトランジット。当然ビールである。そして、小型飛行機でナポリへ。そしてナポリ空港から車でホテルへ。

今回のホテルは、かなり良いホテルである(四つ星)。ネットは一日30分まで無料、それ以上は有料。ちょっと迷ったが、今日はネットは使わないことにする。

みんなで徒歩で15分ぐらいの繁華なエリアに出かけて食事。おいしいピザとパスタをいただきました。

29日
仕込み。といっても、今回は美術館の展示室(ロビーではないよ)での公演なので、総仮設である。照明は、美術品を傷めないように発熱しない機材ということで、美術館にあるメタハラのソースフォーパー(150W)に限定。だから調光はできない。
事前に僕が書いた図面の通りにフェスティバルスタッフが設置してくれるのを待つしかない。字幕関係をできれば仕込みたいところだが、電源も先方に出してもらわないといけなくて、それを待たなきゃ行けないので、結局朝から夕方まではただひたすら待つ、待つ、待つ。
午後、「ヤルタ会談」のほうが先にセッティングができたので、フォーカスをしてみる。すると、えらく集光しているものからかなり拡がるものまで、配光がバラバラだ。そこら辺の個体差は、適当にあたりでカバーする。

夕方、フェスティバルの技術の一番偉い人が来て、「東京ノート」会場で色々と仕切り始めている。「レンズをどれにするか、フィルターをどうするか決めて欲しい」と言われた。フィルターは「コンバージョンのLEE201を用意したぞ」と言っているが、ただでさえメタハラの真っ白の光なので、Bのコンバージョンはいらない。使うとしてもAのほうだ。だが、先方は「201以外にも202も203(注:いずれもB系のフィルター)もあるぞ」と言う。違うんだって、ブルーはいらないんだよ。使うとしてもアンバーだよ、と言っても全然伝わらない。あ、なぜこんなに話が伝わらないかというと、通訳がいなくて、英語(両者にとって外国語)でやってるからである。で、伝わらないので「フィルターは必要ない」と言った。これは伝わった。

レンズは、集光から拡散まで、4段階選べるという。え、そうだったの? もうヤルタの方はバラバラに仕込まれてたから、そのまんま適当にシュートしちゃったよ。でも、ちゃんと選べるんならちゃんと仕込みたい。みんなで「ヤルタ会談」の会場に向かう。

「ヤルタ会談」の会場のライトを見せて、「ね? バラバラでしょ?」と言っても、どうも話が通じない。時間をかけてコミュニケーションして、やっと事態がわかった。「ヤルタ会談」に仕込まれている機材は、すべてレンズが入っていない状態なので、最も集光された状態でなければならないのだが、(理由はわからないが)ひどく光が拡散してしまっているものが混入している、ということのようなのである。彼らの言う「レンズ」は、パーライトのランプの前面ガラスだけみたいなもので、無地透明がVN、曇りガラス状のものがN、車のヘッドライトレンズ状のものがMである。もともと集光されているものに、それらのレンズを入れると、パーライトの球種のように広がりを調整できるということなのだ。しかし、もともとの広がりがここまでバラついていては、レンズ以前の問題である。ということをイタリア人スタッフに伝えるのに、ものすごく時間がかかった。広がりがバラバラなのは、僕には一目瞭然なのだが、彼らはレンズによって広がりを調整できると信じて疑わない。しかたないので実際にライトをつけて、説明する。「ほら、こっちはこんなに小さいけど、こっちはこんなに大きいでしょ。小さいのをレンズで大きくすることはできるけど、大きいのをレンズで小さくすることはできないでしょ」。いや、大きいのもレンズで小さくできる、と言いながら、イタリア人がVNのレンズを機材に入れる。点灯していると機材が高熱になるので、レンズを入れるときはいちいち消灯しないといけない。で、メタハラだからいったん消灯すると5分ぐらいは点灯しない。だからレンズを入れてみてどう変わるかを試す、だけでも10分15分とどんどん時間が過ぎていく。拡散している光をレンズで集光することなど、もちろんできない。そのことは、どうにか納得してもらえたようだが、今度は「いやそれは、ランプの問題だ」と、今度はランプを交換するという。実際ランプを交換してみると、驚くべきことに拡散しているのが直って、ちゃんと集光した状態になった。

というようなやりとりを進めてしまったので、全てのライトについて、拡散しているものについてはランプ交換で直す、ということで進めざるを得ない流れになってしまった。これは僕の戦略ミスである。最初に拡散している器具と集光している器具を適当に使い分けてシュートしてだいたいOKになっていたのだから、そのままで良かったのである。完全に「やぶ蛇」だ。敗因は、この器具について僕の事前調査が不十分だったことである。レンズがない状態で十分集光していなければならない、それをレンズで配光調整する、ということを僕が最初から理解していれば、こんな事態にはならなかったはずである。

結局、替えのランプがそんなに数が揃うわけがなく、ほぼ最初通りのシュートになった。
「東京ノート」のほうは、最初に搬入されたトラスの部材が違っていたとかで、色々と時間を食っている。フォーカスに入れたのは21時半。まあどうにかこうにか今日中には終われそうだ。その後、会場のシャンデリアをつけてみたらどうなるかとか、字幕を出してみて明るさのバランスがどうとかやって、退出したのは23時ごろ。

食事は済んでいたので、テクニカルスタッフみんなで海の見えるカフェでビールで乾杯。ナポリに来てはいるが、やはりみんな日本の原発の状況が気になっている。その話で盛り上がった。

ホテルに帰ったのは1時過ぎだったか。一週間接続し放題のネットアカウントを購入(30ユーロ)。

30日
朝、劇場(と言っていいのか)に入って、テクニカルの細かい直しなど。昼少し前から「ヤルタ会談」の場当たり。「ヤルタ会談」の会場は窓が無く、ほぼ本番環境で場当たりができた。昼食をはさんで「東京ノート」の場当たり、稽古。「東京ノート」の会場は外光が思いっきり入るので、日没にならないと本番環境の光の状態は見ることができない。
19時開演で「ヤルタ会談」ゲネ、20時半開演で「東京ノート」ゲネ。「東京ノート」は、会場の設備照明(シャンデリア)をつけっぱなしにしてやってみたのだが、どうもうまくいかない。日没して照明の光が効く状態になってみると、どうも他の観客の存在が非常に気になって、芝居に集中できいない。「四番倉庫」がうまくいったのに味をしめて、今回も客席が明るいままで行けるかと思ったが、そう甘くはなかったようだ。「四番倉庫」がいかに緻密に作られていたか(自分でやったんだけどね)を、あらためて再確認した形。本番はシャンデリアは消灯して行うことに決定。
ホテルのそばのピザ屋で食事。こちらはこういう店はだいたい25時ぐらいまでは開いている。「夜更かしの街」だ。

1日
午後入り。
ミーティングで、明日と明後日の空き時間をどう過ごすかをみんなで話し合う。治安が必ずしも良くなく、単独行動は危険なので、遊ぶにしてもできるだけまとまって行動しなければならないため、全員で計画を立てる必要があるのである。僕は、明日は昼過ぎから国立考古学博物館を見るだけの短時間コース、明後日はポンペイ遺跡を見るコース、にした。
ミーティング後、少し「東京ノート」の稽古をし、19時開演で「ヤルタ会談」、20時半開演で「東京ノート」、初日。シャンデリアを消して正解だった。
終演が22時半ごろ。退館したのは23時ごろだったか。送迎バスでみんなでホテルに戻り、次に24時(夜中だよ)にロビー集合して、フェスティバルバーへ。今日は僕たちの初日なので、食事に招待されているのだ。
おいしい地中海料理を堪能しました。
ホテルに帰ったのは2時ぐらいだったかな。


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