「特定秘密保護法」と「集団的自衛権」についての極めて大ざっぱな理解

資本主義というのは、とどのつまり、「どうやって自分以外の者にカネを使わせるか」という競争である。僕が子供の頃(高度成長の時代)には、「便利なモノ」がいくつも新しく作られ、大衆はそれにカネを使った。炊飯器、掃除機、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、電子レンジ、パソコン、携帯電話などが次々に開発され、普及していった。

しかし、1980年代ごろに、ついに「便利なモノ」は、中流大衆のほとんど全員に行き渡り、これ以上モノは必要ないという飽和状態が訪れた。そのため、資本主義は新たな商品を作り出す必要があった。モノの次に選ばれた商品は、「大金に化ける可能性があるという期待」だった。金融、不動産、株式などである。広告によって人間の「欲」をあおり、「もっと金持ちに」「もっと贅沢に」という期待を持たせ、そのためにカネを使わせるのである。しかしそれらの商品は、1990年代のバブル崩壊とともに大衆の心からは離れていった。

資本主義が次に商品として選んだのは、人間の「不安」である。老後の生活、犯罪被害、災害などへの備えとしての商品、すなわち、保険、防災、防犯などだ。また、若者に対しては「将来の自立への不安」をあおり、受験産業、資格、外国語、就活、婚活などが商品として開発された。

しかし、長い不景気で、全体的に大衆の財布の紐は固くなった。自由意志ではなかなか商品にカネを出してくれない。インターネットにより情報も行き渡るようになり、中途半端な広告では大衆をその気にさせることが難しくなってきている。しかし、そんな状況になっても、大衆がどうしてもカネを使わざるを得ない「聖域」がある。「ライフライン」である。ライフライン(水道、電気、ガス)は、公共性が極端に高い商品なので、その価格は「作り出すのにかかったお金から自動的に算出される」方式がとられている。いわゆる「総括原価方式」だ。これに目をつけたのが電力業界である。作り出すのにかかったお金を元に価格が自動的に決定されるということは、作り出すのにうんとカネをかければ、価格も自動的に高くなるわけだ。逆に、作り出すのにどんなにカネがかかっても、売上げ価格が勝手に上がるから、電力会社は損をしないで済む。この仕組みに乗じて、ものすごく金のかかる「原子力技術開発」「発電所建設」などが推し進められ、電力業界は、多額のカネを大衆から巻き上げることに成功した。しかし、福島原発事故をきっかけに、その化けの皮がはがれ始めていることは周知の通りである。

大衆がどうしてもカネを使う領域が、ライフラインの他にもう一つある。それは「税金」である。税金は、強制的に徴収されるから、カネを出させるための広告などは必要ない。しかし、税金は勝手には使えない。その使い道は大衆が選んだ議会によって決まるものである。だから、利益を得るためには、「税金で買っても良い」と大衆が納得するような、そういう商品を考える必要がある。たとえば橋や道路や公共施設などの建物は、税金で買うものだ。しかし、ちょっとやりすぎちゃって、無駄な橋や、使い道の無いハコモノがたくさんできてしまい、商品価値が下がってきている。

そこで選ばれたのが「兵力(武器)」である。日本ではあまり大っぴらには言われないが、軍事用の武器(艦船、航空機、車両などを含め)は非常に利益を出しやすい商品である。何しろまず、材料などの詳細を必ずしも公開する必要が無い。武器の中身は「軍事機密」だからである。そして、市場規模がものすごく大きい。買い手に中身の詳細を知らせること無く、かなりの高額で売ることが出来る、売る側にとってはとても魅力的な商品である。日本の産業も、ずいぶんたくさん武器を作り、売ったはずである。しかしそれも冷戦時代に米ソがやりすぎて「相互確証破壊」にまで行ってしまい、「これ以上武器を増やすべきではない」というのが現在の国際的な空気になっている。

それでも資本主義にとって、武器が非常に魅力的な商品であることは間違いない。しかし、現状では「これ以上武器は必要ない」ということになってしまっている。そこで考えられたのが、「武器を使って減らす」というソリューションである。つまり、戦争をするということだ。買ってもらった武器を、どうにかして消費させることができれば、資本主義は再び利益を上げることができる。しかし、日本には戦争放棄の憲法がある。だから戦争はできない。ではどうやって武器を消費させるか。答えは「アメリカの戦争に参加すれば良い」である。アメリカは、税金で武器を買う→買った武器を戦争で使って消費する→消費して減った分の武器をまた買う、というサイクルの武器産業構造がすでに回っている国家である。だからアメリカはいわゆる「テロとの戦争」をたくさんやっている。その戦争に日本が「特定秘密保護法」と「集団的自衛権」で参加することができれば、まだカネをもうけ続けることができる。

以上が、僕個人の大ざっぱな理解である。

*この文章は、あくまで素人の個人的な理解で書いたものです。専門家ではありませんので誤解や不正確なところも多かろうと思います。そのつもりで、話半分でお読み下さい。この文章を何かの参考文献にしたりなどは、決してしないで下さい。


カテゴリー: 社会