「安倍政権が悪い」とは言いたくない

TPP、消費税、原発再稼働、特定秘密保護法など、安倍政権はますます「とんでもない」方向に進んでいる。この国に住み続けなければならない僕たち日本人の未来がどうなるのか、とても心配になる。

ただ、たしかに安倍政権のやってることは心配ではあるのだけど、それよりさらに気になることが僕にはある。それは、安倍政権に対する態度が「二極分化」しているということだ。いや、安倍政権を支持する人たちは僕にとってはどうでも良いのだが、安倍政権に反対する僕たちの側があまりにも「安倍政権が悪い」という攻撃的な方向に、行き過ぎているように思えるのである。

安倍政権は、確かに悪い。しかしそれは、あくまで、悪い政策をたくさん進めているから、それらを統計的に見て、「この政権はまずい」という判断になるのであって、安倍政権のやることなすこと全てを「悪」と最初から決めつけるのは、やはり間違っていると思う。

内田樹先生が以前「いじめについて」というブログエントリーでお書きになったように、何か悪いことがあったとき、人間はどうしても「供犠」(くぎ)を求めてしまう傾向がある。悪いことの「原因」を何か(あるいは誰か)に押しつけ、それを排除することにばかりに一生懸命になってしまい、問題の本質を見失ってしまうことがあるということだ。僕たち人間は、そういう性質を持っているのだということを、いつも自覚していなければならない。

安倍政権を「悪者」にし、大声で「悪だ」と叫ぶことは、安倍政権への反対勢力を結集するための手段としてはある程度有効かもしれないが(それが「供犠」というものである)、本当に今の政権の悪事を止め、あるいは勢いを削ぐためには、現政権を支持している人たちや、無関心な人たちの心を動かすことが重要である。安倍政権への反対勢力を結集させることを、悪いとは言わない。しかし、いたずらに対立を激化させて政権支持派の人たちの態度を硬化させてしまっては、状況改善をかえって遠のかせるように思う。

だから僕は「安倍政権が悪い」という言い方はしたくない。「安倍政権がやっていることの一つ一つ」、TPP、消費税増税&法人税減税、特定秘密保護法、原発再稼働、日本版NSC、といった数多くの誤った政策(だと僕は思う)、それらのどこが悪いのかを、きちんと説明しなければならない。そこを混同してはいけない。全部ひとからげにして「安倍政権が悪い」という言い方をするから、「サヨク」と逆にひとからげにされてしまうのである。政権がやっていることの一つ一つ、それぞれどこに問題があるかを、きちんと伝えていかなければならない。ましてや、安倍総理や石破幹事長への個人攻撃など「百害あって一利なし」である。


カテゴリー: 社会