「東京ノート」in中国済南

「東京ノート」中国済南公演(BeSeTo演劇祭参加)に同行している。

劇場は、事前に写真では見ていたので、派手な飾りプロセニアムがあるということ、そこから客席上部へ電飾が飾られていることなどはわかっていた。しかし、バトン図面や回路図面は、要望したにもかかわらず結局今日まで入手できていない状態であった。ただ、回路図の要求に関しては、主幹とディマーの位置が書かれた図が返ってきていた。

機材リストは、この劇場を私たちの前に使用した別の日本のカンパニー経由で入手していたが、その機材リストが、何というか、いかにも「信用できない」感じなのである。このリストを見てなぜ信用できないと思うかというのは、これはもう「勘」としか言いようがないのだが、少なくとも言えるのは、事前にもらっていた劇場の写真と、機材数があまり整合しない、ということである。

また、回路図の要求に対してディマー位置を返してきたということは、おそらく配線は仮設であることがうかがえる。設備工事としての回路配線は無く、ボーダーケーブルなどで仮設でだいたいの回路が引っ張ってある(アトリエ春風舎はこの方式である)ことが予想される。

そんな状態なので、僕の事前判断としてはこれは「仕込図を事前に書いてもたぶん意味がない」ので、一応、材料を準備するための基本プランのようなものは書くけれど、実際の仕込みは現場に入ってすべてその場で対応する、ということとした。

さて劇場に実際に入ってみて、驚いた。パーライトを中心に、シーリング、フロント、ナナメなどが吊られているのだが、どれもひどくホコリをかぶり、ほとんど動かした形跡が無い。配線も、ボーダーケーブルではなく、シングルのコードをつなぎつなぎして、一台一台引き回してある。そして、そのコードの引き方がおそろしく汚い。ぐっちゃぐちゃである。その時に仕込みたい仕込みを、その場で使える近くの配線を使い回して、足りなければ延長して、あるいは使わない機材の配線をバラしてそこのケーブルを持ってきて、などと、好き勝手に仕込み替えを繰り返した結果である。「基本仕込みに戻す」あるいは「いったんバラす」という考え方が無いので、配線が散らかり放題に散らかっている。
さらに、左右の袖中には、天井近くの高さと、SSよりやや高めの高さに、それぞれ前後に単管が通っており、そこに2000Wクラスのムービングライトが上下4台ずつ設置されている。しかしそのムービングライトも、横向きなら横向き、下向きなら下向きのまま、上面にホコリがたまっており、長期間動かした形跡がない。また、多くのパーライトにはカラーチェンジャーが入っていて、チェンジャーの信号線を抜き差しすると、初期動作でフィルターが動いて、ナマで止まるのだが、そこにホコリがたまっている。つまり、これも普段はあまり動かしてないと考えられる。

他に機材があるか尋ねてみると、隣の建物の倉庫に案内された。そこは劇場と同じぐらいの広さもあろうかと思える巨大な倉庫で、中に何が入っているかわからないハードケースが山と積まれている。その中の一つを開け、「これは使って良い」という。見るとソースフォーPARが8台入っている。なるほど。じゃあ他のケースにも同様に機材が入っているのかと開けてみると、他のケースは、空っぽだったり、ケーブルがぐちゃっと入っていたり、フィルターが入れっぱなしのシート枠がドサッと入っていたり、色々である。「これも自由に使って良い」と言われたので見ると、グシャグシャになっている様々な色のフィルターの大判である。

とにかく全体に管理が悪い。悪いというか、管理していない。どこに何があるのかが、ここの人じゃないと全然わからない。仕込みも、配線も、収納もバラバラ、ごちゃごちゃである。そしてそのすべてが、ホコリだらけである。

このようなゴチャゴチャの状態から、まともに計画通りにやろうとするなら、一回すべての仕込みをバラして機材を整理するところから始めないとダメである。しかし、時間的にも人員的にもその余裕はない。そこで、まず、現在仕込まれているライトをつけてみることにする。ぐちゃぐちゃの配線の内、どれが使えるかはわからないが、少なくとも、現状でフェーダーを上げて点灯するものは、ライトからディマーまでの配線が通っているということであるから、配線はその範囲内のものだけを使用しようという作戦である。

結果、PARライト21台、ソースフォー2台、ソースフォーPAR12台の仕込みが完成した。劇場で行われる青年団の本公演としては史上初、凸とフレネルを一台も使用しない仕込みである。地明かりも顔あてもすべてパーライトないしソースフォーPARなので、ゲージをかなり絞り込まないと明るすぎる。すべて40%ぐらいの点灯である。そうすると色が黄色くなりすぎるので、いつもは#B-3を使用するところ、ほとんどのライトに#B-4を入れた。

荒削りの明かりではあるが、全体の出来としては悪くないと思う。




カテゴリー: 照明